「中華躍動」の前でかすむアメリカ

2008年9月号 連載 [手嶋龍一式INTELLIGENCE 第29回]

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ワシントンDCのニュース・ルームに現場から届いた映像を見ていて「おやっ」と思った。いつもなら驚くほど切れのいいカットを撮るはずのカメラマンなのだが――。モニターに映し出された映像には、挑みかかってくるような迫力が感じられない。彼のカメラワークを凡庸な存在に貶(おとし)めてしまった黒々とした影。それは超大国の首都を覆っていた炭疽菌事件だった。2001年9月の同時多発テロ事件の翌月のことだ。アメリカ連邦議会の上院議員事務所に炭疽菌入りの封書が送りつけられた。5人が犠牲となり、17人が死の病に冒された。一般の市民は恐れて連邦議会の周辺に近づこうともしない。だが、われわれはニュース取材を続けなければならなかった。カメラマンは、炭疽菌に備える予防薬を服用しながら現場に分け入っていった。しかし、薬の副作用は凄まじかった。屈強な男の持久力を奪い、気持ちを萎えさせ ………

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