2008年8月号 連載
もう共同通信のピーコを聞かなくなって久しい。「ニュース速報」を告げるチャイムが鳴ると、新聞の編集局は本能的に緊張が走る。「御巣鷹の夏」もそうだった。私は整理部で第1面を製作する面担だった。午後7時過ぎだろうか、あの鐘が鳴って「日航123便がレーダーから消えました」との音声が響き渡った。乗客・乗員524人と聞いて血の気が引く。微かに胴ぶるいがきた。▼まさに「ハイ」である。1985年8月12日。地元の新聞記者だった作家、横山秀夫が描いた『クライマーズ・ハイ』のその日は、私も23年たって忘れ難い。映画も見たが、主人公悠木の葛藤と屈託に胸が熱くなった。悠木は土壇場でスクープに逡巡し、私は最終版で勇み足の見出しをつけた。1面2段ぶち抜き、黒ベタで「絶望」と打つ。翌日、ヘリで救出される生存者の映像を見た瞬間、深い悔恨を感じた。▼奇跡に歓声があがるなかで、独り俯(うつむ ………
オンラインサービスをご利用いただくには会員認証が必要です。
IDとパスワードをご入力のうえ、ログインしてください。
FACTA onlineは購読者限定のオンライン会員サービス(無料)です。年間定期購読をご契約の方は「最新号含む過去12号分の記事全文」を閲覧いただけます。オンライン会員登録がお済みでない方はこちらからお手続きください(※オンライン会員サービスの詳細はこちらをご覧ください)。