「もう一人のライス」秘めた傷口

2008年7月号 連載 [手嶋龍一式INTELLIGENCE 第27回]

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「アメリカ外交界にはふたりのライスがいる」外交のオブザーバーたちからは、こんな囁きが洩れてくる。ひとりはいわずと知れたコンドリーザ・ライス国務長官。いまひとりは、オバマ陣営の外交アドバイザーであり、クリントン政権で最年少の国務次官補を務めたスーザン・ライスだ。ワシントンの外交専門家たちが「ふたりのライス」とひと括りにするその口吻には、どこかネガティブなトーンが漂っている。外交の世界に颯爽と登場したふたりの黒人女性は姓まで同じなのだが、その華麗な経歴に惑わされて実力が過大に評価されていると言いたいのだろう。確かにコンドリーザ・ライスは、国家安全保障補佐官や国務長官まで務めながら、「ライス外交」の名に値する実績はついに残せなかった。「イラク戦争から抜け出すこともかなわず、中東に新たな和平を切り拓くこともできずにいる。政権も残すところわずかな ………

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