「生き埋め」に羽ばたく記憶と想像力

映画『潜水服は蝶の夢を見る』

2008年3月号 連載 [IMAGE Review]

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あたりがやけに騒がしい。朦朧とした意識の中で目覚めたあなたは真っ白な部屋に横たわっている。焦点の合わない視界に白衣を着た男が入ってくる。男は好奇心と、親しみをこめたまなざしであなたの顔を覗き込む。「ようやく気がつかれましたね。あなたは3週間も昏睡状態だったのですよ」。必死で自分の名前を告げようとするが声は届かない……。「いったい、僕はどうなってしまったんだ」。『潜水服は蝶の夢を見る』は主人公の悲痛なつぶやきで始まる。主人公ジャンドゥ(ジャン=ドミニクの愛称)・ボビーは42歳。仏ファッション雑誌「ELLE」の編集長としてカリスマ的な魅力を湛え、美食、モデルとの色恋、週末用の郊外の家など、華麗な人生を謳歌していた1996年、脳梗塞で倒れる。「閉じ込め症候群」という、意識が覚醒した状態で身体だけ麻痺する生き埋め状態になる。画面に繰り返し表れる暗い海中に漂 ………

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