「ラ・マンチャの風」に蘇る母の魂

映画 『ボルベール(帰郷)』

2007年9月号 連載 [IMAGE Review]

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ペネロペ・クルスを見直した。二番煎じの『バニラスカイ』や娯楽アクションの『サハラ』など、私生活とごっちゃになった出演で、典型的なハリウッド女優の末路かと見えたが、この作品では妖艶でスレンダーな美女のイメージを捨てた。尻パッドまでつけて腰まわりを太く見せ、そろそろ薹(とう)の立つ中年女を演じたのだ。冒頭、この映画のテーマ――死が暗示される。威勢のいい歌声が流れ、女たちが墓石磨きに精をだしている。やけに風が強い。カラっ風の吹きすさぶ「ドン・キホーテの故郷」ラ・マンチャ。そこはまた、この映画のアルモドバル監督自身のふるさとでもあるらしい。都会のマドリードとの往復に、壮大な風力発電のプロペラが林立する風景が何度もよぎる。風車に挑んだ「憂い顔の騎士」の暗喩なのだろうか。深刻に見えてどこか滑稽なプロット。これは死のコメディアであり、慰藉の源はそこにあ ………

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