2007年8月号 連載 [手嶋龍一式INTELLIGENCE 第16回]
原爆がヒロシマに投下された――。合衆国大統領は、大西洋上をアメリカに向けて航行中だった巡洋艦「オーガスタ」号の食堂で、第一報を受け取った。「トルーマンが原爆投下の報に接したときの反応はほとばしるような歓喜であった」優れた冷戦史家、長谷川毅は、その瞬間のハリー・トルーマンの表情を『暗闘――スターリン、トルーマンと日本降伏』(中央公論新社刊)でこう描いている。私はこの大著が紡がれていく現場に立ち会ったことがある。西海岸のサンタバーバラの大学で現代史を教える長谷川は、首都ワシントンを頻繁に訪れて郊外の国立公文書館に立て籠もった。そしてホテルに帰る深夜の道すがら、私のオフィスに立ち寄り、ホワイトハウスとクレムリンに陣取る両雄の静かな対決を語り聞かせてくれた。この精力的な歴史家は、大統領が作戦成功を確かめ「喜びの笑みを浮かべた」との一文を綴るために、 ………
オンラインサービスをご利用いただくには会員認証が必要です。
IDとパスワードをご入力のうえ、ログインしてください。
FACTA onlineは購読者限定のオンライン会員サービス(無料)です。年間定期購読をご契約の方は「最新号含む過去12号分の記事全文」を閲覧いただけます。オンライン会員登録がお済みでない方はこちらからお手続きください(※オンライン会員サービスの詳細はこちらをご覧ください)。