編集後記

2007年8月号 連載 [編集後記]

  • はてなブックマークに追加

後期のハイデガーが真理(アレーテイア)の比喩によく使った言葉が「リヒトゥン」(Lichtung)である。英語のライトと語源が同じだ。鬱蒼としたドイツの森で樹木を間伐し、日の光が差し込む空き地のことらしい。森の闇にぽっかりと浮かぶ光臨のイメージは美しい。誰かが「空開地」などと奇怪な訳語をこしらえたが、心屈する日には、どこかに天窓がないかと誰でも空を仰ぎたくなる。▼思い立ってアビ・ヴァールブルクの「蛇儀礼」講演を読み直した。日露戦争の戦費調達に力を貸してくれたユダヤ資本、ヴァールブルク銀行の嫡男ながら、家督を捨てて蔵書家になった民間美術史研究者である。第1次大戦の敗北で精神に異常を来し、分裂病(統合失調症)と診断されて入院する。4年余、妄想を脱せず完治は絶望的に見えたが、阿片投与で症状が緩むと、アビは医師にかけあう。かつてのような学術講演ができたら、 ………

ログイン

オンラインサービスをご利用いただくには会員認証が必要です。
IDとパスワードをご入力のうえ、ログインしてください。

FACTA onlineは購読者限定のオンライン会員サービス(無料)です。年間定期購読をご契約の方は「最新号含む過去12号分の記事全文」を閲覧いただけます。オンライン会員登録がお済みでない方はこちらからお手続きください(※オンライン会員サービスの詳細はこちらをご覧ください)。