狂言版「リチャード三世」の剽軽

演劇『国盗人』

2007年8月号 連載 [IMAGE Review]

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本当に面白いシェークスピアの舞台に出合えたら僥倖(ぎようこう)と思っていい。希代の大悪党が主人公である歴史劇『リチャード三世』を日本に翻案し、狂言師の野村萬斎が演出・主演した『国盗人(くにぬすびと)』が、ユニークな出来上がりだ。狂言の発想をベースに、古典芸能、現代演劇など幅広い表現手法を総合する形で、原作に隠れていた喜劇的性格を濃厚に引き出した。誰にも愛されない代償を権力に求めた人間の孤独を、日本的な無常観の中に情感豊かに描き出している。蝉が鳴き、焼け落ちた能舞台に武悪面が転がっている。訪ねて来た女が面を拾い、芭蕉の「夏草や 兵(つわもの)どもが 夢の跡」とつぶやく。雨音、雷鳴、現代の戦争の爆撃音が静寂を破ると、王位を狙う悪三郎(リチャード三世)が姿を現し、夢幻能的な世界に入っていく。赤薔薇、白薔薇一族の闘いは黒沢映画が描く戦国時代の雰 ………

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