グローバリゼーションの陰画

映画『バベル』

2007年7月号 連載 [IMAGE Review]

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足音が聞こえる。毛布にくるんだ銃を背に、荒野を歩むアラブ人の男。シルエットが微光に包まれている。この発端のシーンだけで、イニャリトゥ監督の意志が感じられる。銃が売られた。ハイエナを撃つ少年。眼下の山道を走るバスに戯れに放った銃弾が、窓際に座っていたアメリカ人女性を貫く……偶然の連鎖にすぎない。が、それを無意味な連鎖と言いきれるのか。映画全体の構成が同じ連鎖をなしている。画像はだしぬけに飛ぶ。モロッコの荒涼たる山岳地帯から、東京のハイライズ(高層建築物)の超現実的な風景、そしてアメリカとメキシコの国境地帯の荒野へと。そこに原因―結果の因果律は働かない。ふと見上げるテレビの画面や、壁に飾られた記念写真、国際電話の彼方の音声……微かな接点があるだけだ。人は今、そういう世界に生きている。まったく無縁と思える遥かな辺境が、すぐ隣の異空間のようにうずく ………

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