2007年6月号 連載 [手嶋龍一式INTELLIGENCE 第14回]
成功は千人の父を持っている。だが失敗は孤児である――。ケン・フォレットは、ノンフィクションの秀作『鷲の翼に乗って』にこう記している。舞台はイスラム革命の足音が近づきつつあった70年代末のイラン。テキサスに本拠をもつEDS社のアメリカ人駐在員ふたりが契約の不履行を理由に突如官憲によって刑務所に収監されてしまう。会長のロス・ペローは、大切な部下を釈放させようとカーター政権に懸命に働きかけたのだが埒が明かない。テキサス魂を体現した男といわれたペローの怒りはついに沸点に達する。ベトナム戦争で捕虜を救出した実績をもつ大佐を雇って独自の救出チームをつくり、敵の本陣を衝こうと決意する。成功の可能性は万にひとつ。無謀な試みと諌められもしたが、ふたりを無事に連れ戻している。猛々しい鷲の翼に乗って危地に赴くテキサス男。だが、その鎧の下には知将の胆力が隠されていた ………
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