「慰安婦問題」が軽視できないのは、そこに安倍政権に内在する弱点が露呈しているから。致命傷になりかねない。
2007年5月号 POLITICS [厄介な米国世論]
その時、トーマス・シーファー駐日米国大使は気色ばみ、珍しく強い口調で言った。「ノー。これは、ホット・ボタン・イシューだ。あなたは間違っている」3月9日、東京・赤坂の大使館裏にある公邸に、日本の大手新聞各社の論説委員クラスを集めた席でのこと。米下院で審議中の従軍慰安婦問題をめぐる対日非難決議案について、知米派を自負するベテラン記者が「決議案なんて千本以上も出ていて拘束力もない。通ったって大したことないでしょう」と訳知り顔に質問したからだ。ホット・ボタンとは、非常ベルの意味。そっとしておけば大事はないが、子供が誤って押してしまうと大騒ぎになる。シーファー大使は「旧日本軍の関与を認めて謝罪した河野洋平官房長官談話(1993年)から後退していると米国内で受けとめられると、破壊的な影響が出る。米国の世論を過小評価しないほうがいい」と強く警告した。だが、 ………
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