映画 『マリー・アントワネット』
2007年3月号 連載 [IMAGE Review]
画面に1980年代早々の英国のポップ・グループ「バウ・ワウ・ワウ」の歌が流れたのには驚いた。 I want candy …… その歌とともに、画面では黄金色のシャンパンが溢れ、ジミー・チュー風のパステルカラーの靴が舞い、苺のタルトがケーキ皿の上で花ひらく。隣席のつぶやきが聞こえた。「おいしそう……」 その一語に尽きる。 英語の台詞を喋るマリー・アントワネットは、悲劇のフランス王妃には見えない。どこにでもいる軽薄なアメリカン・ギャル。女性監督のソフィア・コッポラも、歴史絵巻を描く気などなく、ベルサイユという大掛かりな舞台の上で「等身大」の女の子に18世紀のコスチューム・プレーを演じさせ、80年代ポップスで飾ったかに見える。 だが、才気だけではない。享楽の宴が果て、幾何学模様の庭園の池で迎える夜明けのシーンのように、映画には透明な空しさが漂っている。アカデミー脚 ………
オンラインサービスをご利用いただくには会員認証が必要です。
IDとパスワードをご入力のうえ、ログインしてください。
FACTA onlineは購読者限定のオンライン会員サービス(無料)です。年間定期購読をご契約の方は「最新号含む過去12号分の記事全文」を閲覧いただけます。オンライン会員登録がお済みでない方はこちらからお手続きください(※オンライン会員サービスの詳細はこちらをご覧ください)。