文革を長引かせた「二重人格」

『周恩来秘録 ――党機密文書は語る』

2007年3月号 連載 [BOOK Review]

  • はてなブックマークに追加

 ニクソン訪中3カ月後の1972年5月、周恩来が初期の膀胱癌に罹っていることがわかった。指導者の治療は毛沢東の許可が必要なため、医師団は治療計画を立て党中央に提出した。ところが毛が伝えてきた指示は、①秘密にし周夫妻にも知らせぬこと②検査不要③手術不要④看護と栄養を強化すること――の4項目だった。 この時期、林彪が亡くなって周恩来は毛沢東に次ぐナンバー2の地位にあり、ニクソン訪中で内外で高い評価を受けていた。自らも病身の毛沢東にとって、周恩来は警戒すべき相手になっていたのである。毛の指示の結果、癌治療は手遅れになり、周恩来は4年後に死去している。 一読、ぞっとするようなエピソードを交えて、1966年の文化大革命開始から76年の周恩来、毛沢東の死までを、二人の関係を中心にまとめたのが本書である。 文化大革命を語るに先立って、著者は戦時中の中国共産党内の覇権争い ………

ログイン

オンラインサービスをご利用いただくには会員認証が必要です。
IDとパスワードをご入力のうえ、ログインしてください。

FACTA onlineは購読者限定のオンライン会員サービス(無料)です。年間定期購読をご契約の方は「最新号含む過去12号分の記事全文」を閲覧いただけます。オンライン会員登録がお済みでない方はこちらからお手続きください(※オンライン会員サービスの詳細はこちらをご覧ください)。