谷内流「野心」に潜む勢力均衡外交

2007年3月号 連載 [手嶋龍一式INTELLIGENCE 第11回]

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 信頼するメディアに載る特派員の報告を行間に分け入って読むのはなんとも心地いい。1930年代のドイツに暮らした英国人たちも「フランクフルター・ツァイトゥング」紙に時折現れる「東京発特電」をむさぼるように読んだという。天皇と軍部に支配された極東の大国ニッポンの素顔を鋭い筆致で描いていたからだ。このクォリティ・ペーパーの東京特派員こそ、かのリヒャルト・ゾルゲだった。ナチスの党員証をもつジャーナリストにしてオットー駐日ドイツ大使が最も頼りにする私設諜報員。同時に赤軍情報部に属するスターリンのスパイ――。いくつもの顔をもつ男は、政権の中枢を次々に襲った陸海軍内部の叛乱事件に挑んで、その本質を明快に抉(えぐ)りだした。なかでも二・二六事件をめぐる分析は、独自の情報源の存在を窺わせて圧巻だった。 ドイツが通貨統合に向けて驀進していた1990年代の半ばの「フィ ………

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