2007年2月号 連載 [編集後記]
1月のモスクワを旅したことがある。ソ連時代最後の冬で、零下25度という厳寒を体験した。脳ミソが凍りかけるのか、頭に靄がかかったようになる。ウオツカはロシアでは必需品だった。雪に埋もれたサナトリウムの静けさ。晴天に金粉をまいたようなダイヤモンド・ミストに見ほれて、凍ったグラットアイスに足を取られた。ドイツの批評家ヴァルター・ベンヤミンも、今から80年前の1927年1月、スターリン体制初期のソ連に旅して『モスクワ日記』を書いている。 ▼この正月に改めて読んだ。思わず噴きだしたのは、ベンヤミンが友人から「君の文章は濃すぎる。キモの文章とつなぎの文章の比率でいちばん快適なのは、1対30くらいだ。でも、君のは1対2だ」と難じられるからだ。そうだろう。ベンヤミンの難解なドイツ語は私も呻吟させられた。ドイツ人でも、あの濃密な文章は息苦しかったのか、と思うと少々ほっ ………
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