宰相リシュリュー<上>

大悪党が国と王家を守る

2007年2月号 連載 [第二の男 第1回]

  • はてなブックマークに追加

 華やかに脚光を浴びる主役の陰に、第二の男がいる。彼なくしては、一場の幕もあがらない。影のかたちに添うように、主役になくてはならぬ存在の生きた証とは何か。野望か使命感か、忠誠心か友情か、愛情か憎しみか、それらすべてか……。複雑な心理の綾なす二人のドラマがある。*   *   *   *   *「緋色の宰相」と呼ばれた男である。神に仕える枢機卿の衣を着た政治家なんて、どだい、いかがわしい。民衆も大貴族も、この非情な権力者を深く憎み、嫌悪した。 甚だしきは、アレクサンドル・デュマの大ロマン『三銃士』の大悪党である。ダルタニャンと三銃士が、宰相の陰謀から美しく気高い王妃アンヌ・ドートリッシュを守る物語には、しかし、大きな価値の倒錯があった。 王妃が通じる英国のバッキンガム公やスペインこそ、フランスの敵である。リシュリューが叩こうとするのが当然な ………

ログイン

オンラインサービスをご利用いただくには会員認証が必要です。
IDとパスワードをご入力のうえ、ログインしてください。

FACTA onlineは購読者限定のオンライン会員サービス(無料)です。年間定期購読をご契約の方は「最新号含む過去12号分の記事全文」を閲覧いただけます。オンライン会員登録がお済みでない方はこちらからお手続きください(※オンライン会員サービスの詳細はこちらをご覧ください)。