編集後記

2006年11月号 連載 [編集後記]

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 余姚に行った。上海の南、揚子江デルタにあって、紹興と寧波に挟まれた市である。何しに? 一言では言い難い。 曖曖たり 遠人の村 依依たり 墟里の煙 狗(いぬ)は吠ゆ 深巷の中 鶏は鳴く 桑樹の顚(いただき)  悠揚と変わらぬ中国の村里の光景である。それが見たかった。詩は江西の人、陶淵明(西暦365~427)の「園田の居に帰る」だが、車をいくら走らせても、都市化した浙江の沿道風景が車窓を流れるばかりで、日本の農村と変わらない。 ▼前日、中国の文人、余秋雨に会った。余姚はその故郷である。彼に「酒公の墓を見たい」と言った。アメリカで論理学を学んだが、帰国後は不遇の生涯を送り、教師から代書人に零落した酒豪(酒公)張先生の小伝が、彼の紀行文集『文化苦旅』に載っているからだ。酒公は書の名人だった。酒公筆の墓碑が全山に立ち並ぶ墓地が余姚にあり、酒公自身の墓 ………

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