2006年9月号 連載 [編集後記]
渋谷で夜景を眺めていた。隣の席にいた若い記者が「あっ」と小さな声をあげた。ワンセグ携帯の画面を見ている。液晶のなかで躍る小さな人影。リング上でボクサーが両手をあげていた。「亀田(興毅)、勝ったらしいですよ」。ちらっと横目で流し見たから、瞬間視聴率52.9%に貢献したかもしれない。 ▼TBSに殺到した5万件の抗議電話、翌日の不遜なサングラス会見……騒ぎはご承知のとおりである。ボクシングの玄人ではないし、試合も全ラウンドを見たわけではないが、誰もが不快を感じたのは前宣伝と実像のギャップだろう。イキがっているだけで、真のボクサーが持つしなやかさとストイシズムがない。「見方いろいろ」なんて開き直りは、小泉首相の「人生いろいろ」の口真似で、その小ざかしさには閉口させられた。 ▼同じ協栄ジムにいた具志堅用高氏が近所に住んでいる。ときどき犬を連れて散歩している ………
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