悲運のホイッスル
2006年8月号 連載 [ひとつの人生]
「宿沢広朗という楕円球は今、着地の瞬間に大きく不規則バウンドして消えてしまい、そこでノーサイドの笛が吹かれてしまいました」。絶句した。6月22日、築地本願寺。葬儀委員長の奥正之・三井住友銀行頭取は、弔辞の半ばで涙にむせんだ。 55歳の早すぎる死。前夜も遅くまで仕事し、早朝に「行ってくるよ」と妻に告げて群馬県の赤城山に登山した。下山途中、心筋梗塞で倒れ、帰らぬ人となった。 伝説のラガーマンだった。早大時代もスタープレーヤーだったが、それ以上にラグビーの全日本監督として1989年5月、伝統のスコットランドを28対24で下した。日本のラグビー史に彼の名を刻んだ一戦だった。訃報を聞いた清宮克幸サントリー・サンゴリアス・ラグビー部監督は言う。「プレーヤーとしてもさることながら、日本代表の監督も務められるなど、宿沢さんは誇れるOBでした」 プレーヤーよりも監督――バ ………
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