モラリストの「最後」
2008年12月号 連載 [ひとつの人生]
「楽しみにしていたんですが、どうもからだの調子がよくないんです。先に延ばしていただけませんか」9月半ば、元自民党幹事長、野中広務のもとに、筑紫本人から電話があった。筑紫が客員教授をつとめる立命館大学で、学生千人を前に2人でトークを予定していたのだ。淡々としたいつもの声だった。不安の影はなかったから、「ああ、それは大事にしてください」と野中は励ました。それが最後になった。9月29日には、TBSの看板番組「NEWS23」で番組枠を20分延長し、「あすへの伝言」として野中・筑紫対談を放映する予定だったが、病勢募って収録できず、それもかなわなかった。昨年5月、筑紫は肺癌を公表、18年間も務めたキャスターの長期休養に入っていた。07年参院選や李明博・韓国大統領来日などでおりおり生出演はしたが、治療のあいまには好きな京都の知恩院近くで暮らし、近所に住む野中とも一緒に散 ………
オンラインサービスをご利用いただくには会員認証が必要です。
IDとパスワードをご入力のうえ、ログインしてください。
FACTA onlineは購読者限定のオンライン会員サービス(無料)です。年間定期購読をご契約の方は「最新号含む過去12号分の記事全文」を閲覧いただけます。オンライン会員登録がお済みでない方はこちらからお手続きください(※オンライン会員サービスの詳細はこちらをご覧ください)。