麻生国連演説と官僚機構の間合い

2008年11月号 連載 [手嶋龍一式INTELLIGENCE 第31回]

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「銀行家には常に二通りの人種しかいない――と、その昔、聞かされたことがあります。わずかしか記憶できない者と何一つ記憶できない者。彼らが棲む金融の世界では、常軌を逸した熱狂とその果てのパニックが形影相伴うがごとくつき従っています。狂騒は金融の世界に必ずや胚胎し、やがて破局を招くのです」総理大臣の指名を受けて24時間後にニューヨークに到着し、国連本会議場で演説に臨んだ麻生太郎首相は、狂騒とパニックを「終わりなきロンド」に喩(たと)えてみせた。日本の政治家といえば、凡庸を極めた官僚の作文を棒読みするのが通り相場だったから、麻生スピーチは並み居る各国の首脳を驚かせた。サブプライム・ローンを組み込んだ金融商品の売り買いに熱狂していた欧米のマーケットに較べて、わが東京市場は素面(しらふ)だったと前置きしてこう述べた。「これとて1980年代から90年代にかけて ………

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