2026年4月号 BUSINESS

安藤聡J-FLEC理事長(HPより)
金融庁の肝煎りで2年前に発足した金融経済教育推進機構(J-FLEC)が思うような成果を挙げられていない。「国民全体の金融リテラシーの向上」という壮大な使命を果たすのは容易ではないが、金融庁・日銀・業界団体という「寄り合い所帯」の難しさがさっそく浮き彫りになった格好だ。
そもそも金融経済教育推進機構とは何か。2024年4月に設立され、同年8月に本格稼働した金融庁所管の認可法人で「中立・公正な立場から官民一体で金融経済教育を推進する唯一の公的機関」だ。略称「J-FLEC(ジェイフレック)」という。
日銀が事務局だった金融広報中央委員会、さらに各業界団体の金融経済教育に関する事業を移管し、一元化した。金融庁・日銀・業界団体がそれぞれカネも人も出し、理事長と3人の理事以外の約70人の職員全員が出向者だ。
3月6日にウェブサイトで公開した「KPIの達成状況」は見栄えに欠ける内容だった。25年4~12月の実績を示したものだが、「実施回数」は年間1万回の目標に対して39.7%の3970回、「参加人数」は目標の年間75万人に対して28.6%の21万4447人にすぎなかったからだ。
実施回数は「参考」として25年度の見込み(9329回)をあわせて発表し、KPIに迫る実績を挙げていることを示したが、参加人数の見込みの公表はなかった。
もちろん数字そのものは大きな問題ではない。KPI自体も機構発足前の各団体による実績を元にしたとはいえ「積み上げた数字ではなく、目標として掲げるのにちょうど良かった」(関係者)という程度の位置づけにすぎない。
むしろ懸念すべきなのは、寄り合い所帯から聞こえてくる不協和音だ。複数の関係者は「日銀からの出向者の働きが良くない」と口にしてはばからない。
機構の母体の中心は、日銀の情報サービス局が事務局を務めていた金融広報中央委だ。1950年代から活動を続けてきた歴史の古い団体だったが、機構への事業の移管に伴って解散した。金広委は47都道府県に置かれている「金融広報委員会」と連携し、戦後の地方の金融リテラシー教育を担ってきた自負がある。
とはいえ日本の国民の金融リテラシー教育が失敗に終わってきたのは、「貯蓄から投資へ」のスローガンが空回りしていた過去を持ち出すまでもなく明白だ。日銀がその責任の一端を担っているのは疑いようがない。だからこそ機構への一元化が決まったといえよう。
ところが当の日銀はどこ吹く風。官民挙げた肝煎りのプロジェクトにもかかわらずエースを送り込む様子はなく、幹部すら「資質に欠け、なぜ選ばれたのかわからない」(関係者)という体たらく。日銀出身者の多い地方との連携窓口もうまく機能するはずもなく、その結果が前述のKPIだ。
ほかの民間の団体にも問題はある。その代表が生命保険協会だ。「カネは大して出さないが、口だけは出す典型」と関係者は眉をひそめる。別の業界の関係者は「国民の金融リテラシーが向上すると生保の契約にてこずるので非協力的にならざるを得ないのだろう」と嘆息する。
各組織の思惑の真偽はさておき、家計の金融資産のほぼ半分がなお現預金のままの日本で金融経済教育の本格化が急がれるのは論をまたない。機構はまもなく3年目を迎えるが、「よそ者」ばかりで構成する組織のありようを見直すときかもしれない。