日経新聞が「高市叩き」の急先鋒/飲食料品「消費税ゼロ%」潰しに走る裏事情

2026年4月号 BUSINESS

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日経新聞の長谷部剛社長

高市早苗首相が表明した消費税減税を巡り、新聞業界が神経を尖らせている。この減税は飲食料品の消費税率を2年限定でゼロ%とした後、給付付き税額控除に移行することで低中所得者の支援を目指している。だが、8%の軽減税率が適用されている飲食料品がゼロ%に減税された場合、8%の軽減税率の対象は新聞だけとなる。業界では「新聞のために8%の税率が残るのはおかしい」との批判が再燃し、軽減税率の対象から新聞が除外される事態に発展することを恐れている。

消費税減税や給付付き税額控除の制度設計に加え、財源の確保策などは与野党が参加する「社会保障国民会議」で議論される。高市首相は夏前に制度設計を終え、秋の臨時国会に関連法改正案を提出したい意向だ。このため、新聞業界では消費税減税の阻止に向け、与野党に対する働きかけを始めた。さらに全国紙や地方紙でも消費税減税に反対する論調が強まっており、新聞業界の強い危機感を浮き彫りにしている。

高市首相は衆院選の直前、給付付き税額控除を導入するまでのつなぎ措置として、飲食料品に対する消費税率ゼロの検討加速を表明した。従来なら自民党税制調査会が壁になっていたが、高市首相が主導して公約に明記した。野党が衆院選に向けて消費税減税を打ち出したのを受け、争点を潰す選挙戦術でもあった。

しかし、片山さつき財務相は「選挙で民意を得た」と容認する姿勢を示し、当初は減税に反対していた財務省も減税容認に転じた。仮に飲食料品に対する消費税が免税となれば、現在8%の軽減税率は新聞のためだけに残り、複数税率の煩雑さや生活必需品としての新聞の意味合いなどが再び問われるのは必至だ。

特に新聞はこの10年で部数が大幅に減少し、軽減税率の対象となった当時よりも社会的な影響力は低下している。こうした厳しい情勢の中で軽減税率の見直し論を封じ込めるため、新聞業界は財務省と一緒に減税反対で共闘する思惑だった。

しかし、衆院選で自民党を大勝に導いた高市首相の求心力が高まり、もはや政府・与党には減税反対の勢力が姿を消した。このため、全国紙や地方紙、通信社が加盟する日本新聞協会が中心となり、財政規律派の与野党議員に消費税減税の問題点などを説明し、減税阻止に乗り出している。また、新聞各紙はこれまでも消費税減税には慎重だったが、衆院選後に減税が現実味を帯びると、紙面でも反対の論調を強めている。

なかでも反対の急先鋒に立つのが日本経済新聞である。日経は選挙期間中から「消費税減税ポピュリズムに未来は託せぬ」などと厳しい論陣を張っていたが、選挙後は減税に伴う悪影響などを指摘し、減税の撤回を求めている。

実は新聞に対する軽減税率の適用は、新聞業界を挙げて当時の自民・公明の与党に働きかけ、聖教新聞(公称550万部)を発行する創価学会が支援母体の公明の賛同を得て、当時の菅義偉官房長官の調整で実現した経緯がある。その際に新聞協会で主導的な役割を果たしたのが、読売新聞グループ本社の山口寿一社長と日経の長谷部剛社長(3月末に会長就任)の2人である。両氏は早稲田大政経学部で1年先輩・後輩の関係にあり、政界に働きかけていた当時はまだ幹部クラスだったが、新聞に軽減税率が適用された功績が高く評価され、経営トップに昇り詰めた。

それだけに2人とも軽減税率に対する思い入れは人一倍強い。最近では国民民主党の玉木雄一郎代表も消費税減税に反対する姿勢を鮮明にしており、新聞業界は玉木氏との共闘を模索中だ。ただ、玉木氏本人は新聞に対する軽減税率には懐疑的な見方を示しており、新聞業界の共闘相手は見つかっていない。

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