阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2019年2月28日 「ハコ企業」が敗訴続き、裁判所も反市場勢力にコワモテ

  • はてなブックマークに追加

上場していながら業績不振で株価が底這い状態、息も絶え絶えながら、その看板を悪用する反市場勢力に乗っ取られた企業を「ハコ企業」という。FACTAは創刊当初からハコ企業を叩き続けてきたが、日本取引所(JPX)グループの甘い退場ルールで上場廃止をまぬかれ、生きながらえている例は枚挙にいとまない。

だが、ようやく司法の目が変わりつつあるのだろうか。最近、反市場勢力や証券犯罪にまつわる裁判で、「反市」側が立て続けに負けている。

一例を紹介しよう。投資事業を営む上場企業とその社長が原告となって起こした裁判の二審判決が昨年末、言い渡された。この裁判は、同社の社長が過去にマネーロンダリングに関わっていたことを指摘するネット上の書き込みが名誉毀損に当たるとして、書き込んだ人物を訴えたという内容だ。

東京地裁での一審判決は、書き込んだ人物の敗訴となったが、二審の東京高裁ではまさかの逆転判決が言い渡された。一審で被告が支払いを命じられた損害賠償金は大幅に減額されたうえ、事実認定も覆った。

二審の判決書は興味深いので、その一部を抜粋しよう。

判決書は原告の社長らについて「社会的評価はもともとたいして高くなかったことがうかがわれる。そして原告は、国境を越えた不正な現金移動などにより資金の出所を不明にする行為を実行するような人物であって、取締役としての忠実義務や善管注意義務を果たす資質や、受任者・受寄者としての善管注意義務を果たす資質に欠けることが明らかであって、保護すべき社会的名声に乏しい」などと明確に指摘している。

この社長がかつて率いていた上場企業についても「上場審査を受けていない投資事業に業態変更し、いわば裏口上場を遂げたような状況にあり、株価の乱高下の背景に株価操縦や偽計取引などの不公正取引がウワサされ、増資を繰り返して投資家から巨額の資金を調達したが結果的に投資事業に失敗して株価も業績も低迷して多くの投資家に多額の損失を被らせるなど、様々な不正の温床となるいわゆるハコ企業と同様の外形的な状況を呈していた」と判断した。マネーロンダリングについての事実認定や判決理由が反市場勢力に厳しい内容であることはもちろん、「ハコ企業」「裏口上場」といった符牒を用いていることは、それだけ反市場勢力に対する裁判所の問題意識が深まっていることを表していないか。

この会社では最高裁に上告のためか、こうした判決が下ったことを開示していないが、証券取引所や自主規制法人の手前、開示できないだろう。

同じように反市場勢力が牛耳るハコ企業が起こした名誉毀損裁判で、ハコ企業側の敗訴した例は他にもあるうえ、オリンパスの損失隠しで指南役として逮捕・起訴された横尾宣政被告も1月に最高裁が上告を退け、有罪が確定した。粉飾決算を外部から幇助して有罪になったのは、これが初のケースだと聞くから、証券犯罪やその周辺に対する司法の考え方は変わりつつあるのかもしれない。

行政もこうした事例に厳しくなっているのか、証券取引等監視委員会は2月、「犯則調査における証拠収集・分析手続についての整備」として内閣総理大臣と金融庁長官に向けて金融商品取引法の整備を建議。刑事訴訟法などと同様に、金商法でも電磁的記録の差し押さえを可能にしたい考えだ。

FACTAは銀バエのように沸いてくるハコ企業と戦い、ときに名誉棄損で訴えられても、市場を知らない裁判官たちの無理解に歯ぎしりしてきただけに、ようやく風が吹いてきたと諸手をあげて歓迎したい。

相変わらずハコ企業をかばい、司法や行政の動きに置き去りにされているJPXグループはどうするのだろう。