阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2018年11月 4日 脱パワハラ、「青学」流を企業も学べ

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以前、知人の誘いで青山学院大学の教授と会食したときのこと、話題が箱根駅伝に向いた。言うまでもなく、青学は今年の正月に4連覇を達成した強豪校である。

「今の若い人は練習の環境さえ整えてやれば、あとは自分たちで勝手に練習して強くなっていくようです」

会食は青学が15年に箱根駅伝で初優勝を遂げて4~5日後のことだったが、すでにあちこちから「青学はなぜ強くなったのか」と聞かれることが多かったそうで、陸上競技には縁がなかったこの教授も自然と学内で取材していたようだ。それほど青学の雌伏は長く、優勝は驚きをもって受け止められた。

青学陸上競技部の指導法は、監督が学生との徹底した対話を通じて自主性が芽吹くのを促し、高圧的な態度をとらないことで知られる。アメフトやボクシング、レスリングなどで問題になっているパワハラとは対極的な指導法だ。

パワハラはそれがなくなれば、すぐに組織が自由闊達な雰囲気を取り戻して躍動し始めるわけではない。アマチュアスポーツの世界でも自浄能力が働いてパワハラがひどい指導者を放逐したのはいいが、組織として再び活性化するまでには数年の期間を必要とした、という例は少なくない。

あるアマチュア野球チームは、監督のパワハラに耐えかねた選手たちが練習も公式試合も不参加を決め込み、周囲の取りなしにも応じず監督を退陣に追い込んだ。しかしそのチームが往年の力を取り戻すには、やはり数年を要している。それだけ組織の奥深くまでダメージが及んでいるのだ。

それまでのパワハラに嫌気が差して競技から去って行く選手が多いうえに、どうすれば立ち直れるのか模索する時間も必要なせいだ。組織内に立ちこめた弊風を一掃するには、指導者だけでなく、同じ思考法が染みついてしまった幹部級の周辺人物が定年を迎えて去って行くほどの時間が必要な場合もあるだろう。組織から負のDNAを取り除くのは、それほど難しい。

なぜスポーツのパワハラ問題をここで取り上げたかと言えば、今そこにある危機だからだ。

負のDNAを取り除くことができなかったオリンパスが抱える問題がそれである。法務部員である弁護士が、パワハラと公益通報者保護法違反を理由に会社と常務、法務部長、人事部長を相手取って裁判を起したのは、今年に入ってすぐのことだった。つい先日も匿名の社員がフリーメールアドレスを使って役員の不行状を笹宏行社長に通報し、そのメールが本誌にも送られてきた。

会社が重大な不正疑惑で揺れているのに、役員が私腹を肥やしたり、女性スキャンダルを抱えていたりするという。役員の間でも規律が緩みきっているようでは、会社組織がすでに自暴自棄になり始め、理性的な判断を止めてしまっているとみなければなるまい。このところオリンパス株がさえないのは、相場全体の下げに引っ張られているせいばかりではないはずだ。

オリンパスも青学を見習って、保身に汲々として隠蔽工作に励む役員が総退陣し、社員の自主性に任せてみたら? 箱根の急峻を登る「山の神」のような人材が現れて、この会社の難局を救ってくれるかも。