阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2018年9月 2日 [reuters]スポーツも企業も「頭から腐る」

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レスリング、アメリカンフットボール、アマチュアボクシング、居合道、体操......。スポーツ界でパワハラや不明朗な金銭授受といったガバナンス上の問題が相次いで表面化し始めた。

それもこれも企業経営にガバナンスや法令順守が十分に機能していないケースが次々に見つかり、これを軌道修正する動きが広がるなかで、ガバナンスの考え方が垣根をまたいでスポーツ界にも波及したことの表れと見ていいだろう。

これらの多くは日本的な徒弟制度の中で当たり前のように続いてきた悪弊なのだが、これだけ頻発するのは「魚は頭から腐る」――日本のスポーツ界に君臨する東京五輪組織委のトップと、日本オリンピック委員会(JOC)のトップ (お互いに仲は悪い) が、二人ともガバナンスのガの字も知らないからだ。

一方、ガバナンス問題の本家本元である企業経営の分野では、トラックを一周してガバナンスの確立に悩む企業や、新たな問題が突きつけられる企業も少なくない。ここでもトップの資質が問われている。

企業統治と言えば、透明性や公正さと親和性が強いという印象が強いが、それゆえに新たな暗闘を呼び込んでいるのではないかと思われるケースもある。パチスロ機器などのユニバーサル・エンターテインメント(旧アルゼ)と同社を放逐された岡田和生元会長との確執がそれだ。

岡田元会長はにわかには信じがたいような逸話が多く、週刊誌の標的になりやすい人物だ。ギャンブル機器は不正改造の温床になりやすいため、特に海外ではその危険性を排除する技術が重視されるだけでなく、経営陣や株主などに反社会的勢力が入り込んでいないかも厳しくチェックされる。同社は岡田元会長との距離の取り方に苦慮しているといわれる。

すでに経営から離れ、大株主でもなくなったはずの岡田元会長が8月6日に贈賄の疑いで香港で逮捕されたとき、ユニバーサルがわざわざプレスリリースを発表したのはそのためでもあるだろう。

創業家を巡る企業統治の問題はユニバーサルに限った話ではない。3年連続の赤字で資本提携の相手が注目されている大塚家具の問題も、創業者と後継者の間で繰り広げられた路線対立が発端だったが、株主の賛同を集めるうえで企業統治のあり方が問われた。

企業統治は不正防止と業績の持続的な拡大を一体的な目標としているから、短期的な評価にはそぐわないにせよ、創業家との関係や企業統治と業績の関係などについて改めて検証が必要だろう。

日本で企業統治が2周目に入るにあたって忘れてはならないポイントの一つは、企業統治の要である社外取締役が、不正に際してきちんと機能しているかどうか。あるいは企業側がそれをきちんと機能させているかどうかだ。

本誌でおなじみのあの会社からはつい最近も「企業統治という仕組みそのものが日本人に向いていないのではないか」と疑いたくなるような、あるいは人間という生き物について改めて考えさせられるような決定的なファクトがもたらされている。

この会社がもう一度、ガバナンスに関わる問題を起したとき、本誌は研究の材料をたっぷりと提供できるだろう。