阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2018年6月29日 [reuters]役立たず「内部統制報告書」と監査法人の鉄面皮

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今年は何らかの変化がみられるのではないかと思っていたが、期待は空振りに終わったようだ。内部統制報告書の問題である。

神戸製鋼所、三菱マテリアル、日産自動車、SUBARU、東レ、スルガ銀行......。不祥事を起こした上場企業が株主総会を終え、一部を除いて有価証券報告書と内部統制報告書を提出した。

内部統制とは、①業務の有効性及び効率性、②財務報告の信頼性、③事業活動に関わる法令等の順守、④資産の保全--の4つを目的として、組織を統制する仕組みである。しかし不正が社会の批判にさらされていながら、各社の内部統制報告書には何の改善もみられない。

たとえば神戸製鋼所で品質検査データの改竄が発覚した問題では、東京地検特捜部と警視庁捜査二課が不正競争防止法違反の疑いで同社の家宅捜索に乗り出し、もはや製造現場の勇み足やチョンボではすまないところまで来ている。海外でも巨額の罰金の支払いを求められ、経営の根幹が揺さぶられて企業解体の観測さえ立ち上っているのに、その内部統制報告書には監査法人がヌケヌケとお墨付きを与え、「内部統制は有効であると判断いたしました」と何事もなかったかのように記している。

同社のそれを前年度のものと比較してみても、社長の名前や日付、連結子会社数が変わっているだけで、本文はまったく変わっておらず、そこからは危機意識も問題意識も感じられない。

もちろん、会社法が求める内部統制と、金融商品取引法が求める内部統制とでは守備範囲が異なることはわかる。内部統制報告書で監査法人がチェックするのは、金商法上の財務報告に関連したプロセスが中心であることは百も承知だ。

しかし金商法の目的に投資家の保護を掲げている以上、現在の内部統制報告書のあり方が投資家保護には何の役にも立っていないように見えるのは筆者だけではあるまい。「根拠となる法律が異なる」の一言で片付けられない。

以前、三菱自動車や東洋ゴム工業がやはり製品データの改竄に手を染めていたことが発覚したとき、このコラムで「金融庁の幹部が、三菱自動車などの内部統制報告書は虚偽記載ではないのか、という問題意識を持っている」と紹介したことがあるように、行政もそのあり方に違和感を持っている。

しかも、「財務報告の信頼性」だけなら十分に担保されているのかと言えば、そうではあるまい。近年の粉飾決算を振り返れば、どう大目に見ても、報告書もその監査もまったく当てにならなかった事例もあったではないか。企業側もたった2ページの報告書を作成するのに、バカにならない大きなコストを負担しているのに、それが無駄になっているようにしか見えない。別の言い方をすれば、内部統制報告書という制度が有用性も実効性も持たず、危地に立たされているということだろう。

これだけ上場企業の不始末が相次いでいるのだ。内部統制を虚器にしないためにも、一度立ち止まってそのあり方を見直す時期に差し掛かっているのではないか。