阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2018年5月 1日 [reuters]ぐらつく安倍政権、焦る外国人投資家

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日本企業に投資している外国人投資家が、ぐらつき始めた安倍政権の行方に気を揉んでいるそうだ。これまで多少の問題が浮上しても乗り切ってきた安倍政権の安定感を信じていたが、支持率の急低下を目の当たりにしてにわかに焦りはじめた。割安株を丹念に見極めて買いに来る投資家は「実はリスクヘッジがほとんどできておらず、ちょっとしたパニックに陥っている」(投資ファンドの運用担当者)というのだ。

加えて米国で金利上昇圧力が高まる中で「政府・日銀の要路から低金利政策の出口戦略について言及されるようになり、日銀によるETF買いは続くのか」と懐疑的な声も出始めた。実質的に新年度入りした3月下旬ごろから株式相場は下値を切り上げる展開になっているが、米トランプ政権の保護主義的な貿易政策が、企業業績に悪影響を及ぼす懸念もあるのだから、安倍政権にとって大きな政治的資産のひとつである株高も揺らぐ可能性が出てきた。

安倍政権が株式市場で果たした役割に、コーポレート・ガバナンス・コードやスチュワードシップコードなどの改革が挙げられる。この二つが出揃い、企業と投資家の間で建設的な対話を促す道具立てが整った。投資家は敏感に反応した。割安な優良銘柄をピックアップし、さらにそこから一歩踏み込んで、一人ひとりの取締役が株主に向き合う真摯な態度を持った人物かどうかを興信所のようにとことん調査するようになった。

投資対象の企業と顧問契約を結んでいる法律事務所の出身者や、かつて監査契約を結んでいた監査法人に在籍していた会計士が社外取締役に就いていないかといった独立性を調べ上げる。そのうえで社外取締役に就任した経緯や経歴から株主の利益を考えてくれる人物かどうか、といった定性的要因の調査にも余念がない。社外取締役の布陣を見れば、その企業が企業統治に関してどの程度の意識を持っているのか、あるいはその布陣が何を目的としたものかがよくわかるのだろう。

時代が変わったのだ。目の肥えた外国人投資家であれば、もはや業績好調な割安銘柄を定量的要因だけを見て物色することはない。目を付けた割安銘柄を最終的に買うかどうかは、企業統治や内部統制が形式だけでなく、実質を伴っているかどうかが重視されるようになった。社外取締役の"縁故採用"など簡単に見透かされ、投資対象から外されるか、株主総会で役員の交代を求められる。

投資家の厳しい目にさらされるのは、企業と投資家の間で潤滑油になるはずのアナリストも同じだ。定量的要因の分析だけなら凡庸なアナリストにもできるだろうが、「あの会社の社外取締役たちは社長に尻尾を振るだけで、株主の利益を考えてくれない」などと、経営批判につながる定性的要因をレポートにずけずけと書ける者がどれだけいるか。

さて、森友・加計問題、防衛庁の日報問題などで明らかになったのは、経営でいう「企業統治」も「内部統制」も安倍政権下では機能していなかったことだ。連休を挟んで3月決算企業の決算発表が佳境を迎えるとともに、相場の格言"Sell in May(株は5月に売れ)"のシーズンがやってくる。安倍政権が株価の重しとなるかもしれない。