阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2018年2月28日 [reuters]オリンパス裁判と抜けない「宮仕え」根性

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このところオリンパスを巡る話題が豊富で、考えさせられることが多い。

2月13日、東京高裁で開かれたオリンパスの取締役に損害賠償を請求する株主代表訴訟の控訴審でマイケル・ウッドフォード元社長や、西垣晋一元取締役に対する証人尋問が開かれた。尋問が行われたのは大法廷で、30人ほどの傍聴人が集まった。

西垣氏は損失隠し事件当時、オリンパスの医療機器事業担当取締役で、事件発覚後に取締役を退任(ただし取締役責任調査委員会で同氏は責任を問われていない)した人物だ。オリンパスの社長を解任されたウッドフォード氏については、今さら説明は不要だろう。西垣氏はオリンパス側の証人として、ウッドフォード氏は株主側の証人として出廷した。

本誌で同社の損失隠し事件をスクープした山口義正記者が傍聴していた。彼によると、一つひとつの質問に自分の言葉で答えるウッドフォード氏に対して、「西垣氏は事前に弁護士事務所でよほど入念なリハーサルをしてきたのか、オリンパス側の弁護士の質問に対して小学生の学芸会のように暗記した台詞を一語一語ハキハキと、不自然なほど言いよどむこともなく答えていた」という。ああ、この人はどこまでもイエスマンの社畜なのだ。

オリンパスの第三者委員会が作成した調査報告書で指摘された「悪い意味でのサラリーマン根性」が全く抜けていないのか、その受け答えには薫り高さがまるでなかったそうだ。自分たちの非をうかつに認めてしまえば巨額の損害賠償を求められるのはわかるが、事件に対する取締役としての反省も矜持もまるで感じられなかったという。

取締役であろうが、それを退任しようが、所詮は会社に随順するしかない哀れな宮仕えなのだ。一審ではウッドフォード氏の社長時代に独断的な人事や経営判断が目立ったことが認定されており、控訴審ではそれも争点の一つになっていたようだ。西垣氏は証言でウッドフォードを社長には不適格だったと言い放ってみせたが、お生憎様。ウッドフォード氏と西垣氏とでは、人間の格がまるで違うことを裁判官の前で見せつけただけだった。

ウッドフォード氏を解任する直前に弁護士事務所で行われた打ち合わせについても、西垣氏には不自然な証言が目立ったせいか、裁判官が苦笑交じりで直接質問する場面さえあったという。

すでに過去のものになりつつある損失隠し事件の裁判についてここで触れるのは、弁護士資格を持つオリンパス社員が同社と笹宏行社長らを相手取り、内部通報者保護法違反で訴えた裁判の口頭弁論が3月1日に開かれるからだ。

奇しくもオリンパスの「旧悪」と「新悪」が同時並行で法廷でさらしものとなり、本誌がいち早く報じた中国・深圳での贈賄疑惑の一部始終と、これを巡る内部通報者保護法違反などが明らかにされていくだろう。

損失隠し事件や贈賄疑惑は、とりあえずは企業統治や内部統制、内部通報の問題ではあるが、もっと大きな目で見た場合、日本人が会社組織から自立できているかどうかを問う問題でもある。社員である弁護士が会社と社長を訴えるのは、その象徴的な構図である。

働き方改革で会社員の副業や兼業が認められるようになれば、サラリーマンは経済的にも精神的にも会社から自律した存在にならずにはいられない。見切り発車的に法案を成立させたところで、「働き方(と言うよりも「働かせ方」)」を巡って内部告発が頻発するだけだろう。働き方の改革は「生き方」の改革も促すのだから。

「哀れな宮仕え」には無縁の話かもしれないが。