阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2018年1月31日 [reuters]悪夢再びオリンパスの中国「贈賄」疑惑

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2011年にFACTAがスクープしたオリンパスの損失隠し事件を題材としたドキュメンタリー映画が、5月から国内の劇場で順次公開されることになった。すでに英BBCをはじめとして、独仏など欧州主要国でテレビ放映された「サムライと愚か者」である。映画の出来は第三者の評価を待たねばならないが、事件発覚から7年かけてようやく国内公開にたどりついたせっかくの作品が、賞味期限切れになりかねない事態が出現した。

FACTA最新号でも報じているように、オリンパスに新たな不正疑惑が浮上しているからだ。オリンパスが生産拠点を構える中国・深圳で当局者に贈賄したのではないかという疑惑である。元社長ら幹部3人が逮捕された損失隠しとこの件は別件だったのだが、事件後も笹宏行社長ら現執行部がひた隠しにしてきたため、またもや内部告発で窮地に立たされている。

そもそもの発端は2006年で、深圳の税関でオリンパスは理論在庫の問題が指摘され、巨額の罰金を支払う恐れが出てきたことに始まる。穏便に解決するために契約した中国人コンサルタントが実は中国の反社会的勢力で、オリンパスへの罰金がゼロになった経緯をみても税関当局者に賄賂が渡った疑いが濃い。

FACTAはこの新疑惑を2年前に報じている。オリンパスは外部の弁護士チームを立ち上げて調査させ、法律違反はなかったとの報告書を得た。しかし 問題のコンサル会社に対し、成功報酬として46億円相当の女子寮2棟の安値払い下げを約束しており、コンサルから明け渡しを求める訴訟まで現地で起こされている。中国現地法人の法務担当者が、海外の著名法律事務所を使ってこの問題を再調査させたところ、贈賄の可能性ありとする結論が出た。慌てた東京のオリンパス本社が法務担当者を更迭、新設部門の「ガバメントアフェアーズ統括室」に異動を命じた。体よく口封じしたのだ。

これに「パワハラではないか」と反発したのは、本社法務部に属す若い社員弁護士だった。この弁護士は社外取締役に善処を求める通知書を送った。すると、この弁護士までメールの送受信が全面的に制限されてしまう。彼はオリンパスと笹社長らを相手取って1月19日、内部通報者を守る公益通報者保護法に違反しているとして東京地裁に500万円の賠償を求める訴訟を起こした。

社員弁護士が会社を訴えるという前代未聞の椿事に、本誌以外でも週刊新潮や週刊エコノミスト、朝日新聞など、複数のメディアが相次いで取り上げ、写真週刊誌も関心を示す。オリンパスは例によって知らぬ顔の半兵衛を決め込んで、1月29日現在、何の発表もしていない。しかし複数のメディアが相次いで報じている以上、重要情報の開示を求められるのは時間の問題だ。

2年前の夏にも、本誌がこの疑惑を詳細に報じ、動かぬ証拠として社内報告書の全文をホームページで公開したが、オリンパスは中身のないプレスリリースを出しただけだった。恐らく今回も「問題はないと考えている」といった趣旨の発表でお茶を濁そうとするだろう。

しかし火付け役の本誌から見る限り、今回の疑惑に関する内部告発は、かつてないほど短期間に広範に行われているようだ。告発者から寄せられた資料には、全社外取締役のメールアドレスも記されており、各種メディアの責任追及は彼らにも及ぶだろう。

社外取締役のメールアドレスは、記事を掲載した雑誌や新聞の記者に知れわたっているはずで、その一挙手一投足は監視されることになる。旭化成や伊藤忠商事などの大企業役員を経験した社外取締役が、オリンパスの株主から責任を問われ、巨額の損害賠償請求を受けることにでもなれば、晩節を大きく汚すことになるだろう。

しかも社員弁護士が作成した訴状には贈賄疑惑についてまとめた資料が添付されており、これが裁判という公開の場でメディアの目に触れればどうなるかは容易に想像がつく。この贈賄疑惑を社外取締役たちがどうさばくかは、日本に中身を伴ったコーポレート・ガバナンスや社外取締役制度が根付くために避けては通れない試練である。さらにまた、オリンパスの上場廃止を回避し、臭いものにフタをする戦犯たちを温存した東証や当局、銀行や関連業界、そして日本株式会社の「事なかれ」も改めて問い直されるだろう。恥を知れ、ニッポン!