阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2017年11月29日 [reuters]地銀の一角にアパートローン撤退の観測

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金融庁や日銀が目の敵にしている「アパートローン・バブル」にいよいよ本格的なブレーキがかかろうとしているのか。アパートローン(アパート・マンション建設向け融資)に積極的な銀行の一角が融資から撤退するとして、信用調査会社に問い合わせが相次いでいるという。

2015年の税制改正により、更地にしておくよりもアパートを建てた方が土地の評価額を引き下げられるようになったことによる税金対策や、日銀のマイナス金利政策で土地持ち富裕層に新しい資産運用法になるという巧みなセールストークで、アパートを建てる地主が増加。アパートを一括借り上げして「家賃収入を保証」をうたい文句に、サブリース業者が受注競争を始めた。

しかし需要を度外視したアパート建設により空室が多く目算外れの物件が続出、一括借り上げしたアパートを転貸しできなくなったサブリース業者が、一方的に家賃を引き下げたり、一括借り上げを打ち切ったりした。当然、ローンの返済に行き詰まる大家が増えた。

アパートローンの焦げ付きが増えれば、金融機関の経営を直撃するため、日銀や金融庁はアパートローンの過度な拡大にたびたび警鐘を鳴らしてきた。そうした中で飛び出したのが、前述した地銀撤退の噂だ。

噂の主になったある地銀は「アパートローンは中止していない。個人向け融資には以前から重点的に取り組んできた経緯があり、融資拡大の姿勢は従来と同じ」と言うが、信用調査会社には「10月下旬に開かれた取締役会では撤退に賛否が分かれたが、頭取が経営トップの判断として撤退を決めた」などと妙に具体的な話も飛び交っている。

これだけ具体的な話が出てきているのだし、アパートローンの拡大が突出しているとして、日銀や金融庁の報告書でも名指しで牽制されていた銀行が、この期に及んで行政に楯突くとは考えにくい。一方、アパートローンに積極的な別の銀行は、融資姿勢についての質問にダンマリを決め込んでいる。他行の融資姿勢を、息を潜めて見極めようとしているのか。

投資家は敏感だ。「サラリーマン大家さん」の個人投資家は「この銀行が融資姿勢を変えると、アパートの市場動向は大きな影響を受ける」として、売りに出されていたアパートの購入を踏みとどまった。

サブリース業者の苦境を伺わせる話もある。アパートの備品を契約通りに更新していないとの批判を受け、ある業者は各室に備え付けのテレビを、リースの液晶テレビに切り替えようとしている。ところがリースの交渉を持ちかけた先が有名なハコ企業で、しかもハコ企業側で精査したところ、持ち込まれたリース条件ではほとんど利益が出ないことがわかり、ハコ企業側から断ったという笑えない話もある。

わざわざハコ企業をビジネスパートナーに選ぼうとしていることと言い、ハコ企業にも相手にされなかったことと言い、サブリース業者の苦境が透けて見えるようだ。

国の規制改革会議などではサブリースはもてはやされてきたが、今夏から苦境は見えていた。

レオパレス21の受注高は8月以降、前年同月比でマイナスが3ヶ月連続となり、大東建託でも4-10月の受注はマイナス3%。毎年受注を活発化させる9月も、マイナス11%と落ち込んだ。この時点ではサブリース契約の一方的な中途解約を巡ってアパートの大家から訴えられるケースが相次ぎ、社会問題化したのが響いたことは容易に察せられる。

焼き畑農業的な経営のツケが回ってきたといえるが、そこに銀行の融資撤退や縮小が加わるなら、過払い金問題で壊滅状態に陥った消費者金融のようにバブル破裂で痛い目をみるのだろうか。