阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2017年10月 4日 中国政商「郭文貴」追撃ブログ8 FT香港報道で浮かんだ中国富豪2人

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新生銀行に中国資本が食指を動かしていることは、英フィナンシャル・タイムズ(以下FT)も9月26日、香港特派員のヘンリー・スペンダー記者が報じた。
https://www.ft.com/content/b7a325fc-a1ca-11e7-9e4f-7f5e6a7c98a2

日本政府保有分と肩を並べ新生銀株の17%程度(FT記事では20%強)を保有する大株主の米ファンド「JCフラワーズ」が、株の買い手を探しているという記事である。興味を示したのが、中国の安邦生命(Anbang Insurance)の呉小暉(Wu Xiaohui)会長と、「明天系」と呼ばれる新興企業グループを率いていた富豪、肖建華だという。

正直言ってFTの情報は古い。安邦生命は創業トップの呉が小平の孫娘を娶ったことで有名だが(離婚説もある)、17年3月時点の新生銀行有価証券報告書で同社株1.55%を保有していることは、FACTAがいち早く8月号で「中国『安邦生命』が新生銀行大株主の怪」と報じている。FTは取材が甘く、すでに安邦が新生の第11位株主であることを確認していない。

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「中国のバフェット」とも呼ばれた呉小暉会長

他方、肖建華は山東省出身で1990年に北京大学法学部を卒業。90年代後半から複数の上場企業の実質支配権を次々と手中にして「明日系」を作り上げた。その黒幕は江沢民・曽慶紅に連なる共産党のグループとも囁かれているから、ある意味で郭文貴と似た「政商」とも言える。

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中国共産党幹部の「白手套」と呼ばれる肖建華

呉と肖に共通する中国語のキーワードは「白手套」。直訳すると「白い手袋」だ。見た目は清潔だが、手袋の下に隠れている手は真っ黒に汚れている。要するに、有力者のために進んで汚れ仕事を手がける代理人のことである。近年は共産党高官のために不正蓄財やマネーロンダリングを引き受ける政商の意味で使われることが多い。
大手邦銀では唯一公的資金が未返済で、中途半端なビジネスモデルで低迷を脱出できない新生銀行は、中国の大物「白手套」の2人にとってお手頃な「不良廉売品」に見えたのだろうか。

問題はこの2人とも、失踪していて中国当局に拘束されていると見られることだ。肖建華は今年1月、香港のフォーシーズンズ・ホテルから拉致され行方不明になった。彼のブログなどもすべて抹消され、中国当局によって大陸に連行されたとの見方が有力だ。安邦生命も中国保険監督管理委員会(保監会)の規制強化の標的となり、5月に新製品発売を3カ月禁止とする処分を食った。そして6月には会長の呉小暉まで拘束され、取り調べを受けている。

10月18日に開幕するの共産党大会(19大)を前に、習近平政権にとって目障りな白手套ははすべてお取り潰しなのだろうか。ともあれ、この2人の新生銀行買収の「意欲」は、当局の摘発を受ける前のことであり、今となっては政争の激流に呑まれた過去の話。だから、FTもその切れっぱしを摑めたのだ。

FTもこの程度か。いわんや、FTの親会社の日経はおろか、日本の全メディアが、お膝元で起きた郭文貴の東京ご乱行のニュースを、1行たりとも追いかけられないのは情けない。日本の当局もFACTA以上の情報は持っていないぶっちぎり状態だけに、画像等これだけ物証を大盤振る舞いしているのにシカトするしかないのだろう。

いまどきの警視庁公安記者さん、恥ずかしくないの? 少しは意地を見せなさいよ。