阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2017年10月 3日 中国政商「郭文貴」追撃ブログ7 財新網と「五毛」ツイート

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9月25日、中国の調査報道メディア「財新」が、FACTA10月号がスクープした郭文貴が1年前に東京に来ていて、日本の証券会社幹部と会い、新生銀行買収について密談していた可能性があるとの件を、本誌誌面の写真入りで報じた。
http://finance.caixin.com/2017-09-25/101149932.html

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本誌記事でも触れたが、財新も記者が日本で取材している。われわれの記事と比べて、あっと驚く新事実はなかったが、より詳しいディテールが含まれていた。以下にかいつまんで紹介しよう。

・「大上海」店員の証言
ユーチューブに画像が流れた2016年8月31日の酒宴について、東銀座の中華料理店「大上海」のある店員は1年前の出来事を覚えていたという。なぜなら客がマオタイ酒を5本も注文したから。客の1人は「(自分は)すごい投資家だ」と自称。別の客は「この人は日本の首相にだって会えるんだ。今回は彼(首相)の時間がなかったが」と語っていた。そう店員は財新記者に打ち明けている。

FACTAも「大上海」に取材したが、応じた店員(中国人)は1年前の酒宴を知らず、じぶんはその後で店員になったからと述べ、店員が入れ替わっていることを強調した。日本語で取材したので、警戒されたのかもしれない。

・新生銀買収を提案したのは筒井・崔
2017年1月、キャピタル・パートナーズ(CP)証券の筒井豊春社長と崔建雄が新生銀行株51%を買収するプランを郭文貴に提案した。郭は興味を示し、1月から2月にかけて郭本人とCP担当者との間で電話会議が何度も開かれた。その際に郭は、自分は表面に出ず、対外的にはアブダビと米国金泉公司(郭が米国に設立した投資会社)が買収する形にするとの意向を示した。米国金泉の表向きの代表者は郭の代理人の余建明(William Je)。しかし4月に郭がインターポールの指名手配を受けたことで計画は暗礁に乗り上げた。

・財新記者にシラを切る
財新記者の取材を受けた筒井は、郭文貴とは面識がないと主張。「そんな反体制の人物と、どうして私が付き合うのか?」と一蹴したそうだ。アブダビと新生銀行の交渉の仲介をしたことも否定。その一方、新生銀行がCPの株主であることや、4〜5年前に顧客のために新生銀行の買収案を検討したことを認めたという。

・ロンドン交渉の同席者
2017年5月末から6月上旬にかけて、JCフラワーズとアブダビ側がロンドンで交渉した。その際、JCフラワーズは社員の槇原純を派遣した。だがアブダビ側と買収価格が折り合わず、交渉は決裂した。アブダビ側は新生銀行の長期的な事業計画を提示せず、全面買収の意向も示さなかったという。

ちなみに槙原純とは三菱商事の元社長・会長の槙原稔の長男で、ゴールドマン・サックス証券を経てネオテニー会長を務め、現在はニューヨークにいる。新生銀行の前身、日本長期信用銀行が破綻し、米企業再生ファンド、リップルウッドなどが組成した投資組合「ニューLTCBパートナーズ」に10億円で売却されたときに、外資主導による再建を後押ししたのが槙原父で、新生銀行発足時の取締役にも加わっている。

以上だが、在外中国人が書いたと見られる外野席のツイッターが騒々しい(中国国内からはツイッターへのアクセスが遮断されている)。在日中国人は70万から80万人、彼らの間で郭文貴事件は知らぬ人がないくらい有名だから無理もない。勝手にFACTA誌面をスキャンしているものもある。

(誌面のスキャンつきツイート)

この3つのアカウントはいずれも郭に批判的なツイートが目立つので、当局に雇われたいわゆる「五毛」(ネット書き込み要員)かもしれない。FACTA記事のオンライン掲載から短時間でツイッターに流れたことを見ると、いよいよその感を強くする。日本内外のネット要員はかなり強力なのだ。

中国語の文面を翻訳すると、1本目は「日本メディアが重大報道、郭文貴がブレアなどの要人を通じてカネを騙し取り、銀行買収の陰謀」

2、3本目はほぼ同じで、2本目が途中で切れているので3本目をざっくり翻訳(※カッコ内は本誌の補足)すると、
「中国に対して友好的ではない日本メディアが、G(郭文貴)の問題で積極的に(真相を)暴き出す姿勢を取った。日本最大の経済メディアの1つであるFACTA誌が、カバーストーリーで『中国の政商が日系銀行の買収を画策』という記事を公開、雑誌10月号に全文を掲載する。記事はGが日本で起こされた1件の交通訴訟を明るみに出し、彼が腐敗大陸から来たスパイであり、身分を偽って日系銀行SBIの買収を画策したと糾弾している」

おやおや、新生銀行とSBIを取り違えている。記事理解のリテラシーの低い「やらせネトウヨ」はどこにでもいるらしい。