阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2017年7月31日 [reuters]ジャパンディスプレイ「社外取」多すぎて船山に上る

  • はてなブックマークに追加

中韓の有機ELパネル攻勢でいよいよ苦境に追い込まれた「日の丸液晶」ジャパンディスプレイ(JDI)が、銀行などの取引金融機関に総額1000億円規模の支援を求めた。筆頭株主の産業革新機構(INCJ)が債務保証を付ける形で、リストラ費用や運転資金を調達し、人員削減も進めるという。債務保証を付けてもらわなければ資金調達できないのなら、JDIの自律的な財務活動は一段と厳しい制約が課せられるようになったと見ていいだろう。

実は6月末にかけて信用調査会社のもとには、JDIの経営状況や運転資金を心配する取引先企業からの問い合わせが殺到した。取引先企業は本気で資金繰り破綻を心配していたようだ。

8月9日に第1四半期決算の発表を予定しており、そこで今回の資金調達について何らかの言及があるとみられ、JDIの生産拠点がある地域の取引先から今も問い合わせが絶えず、不安は収束していない。なにしろ昨年夏にも金融支援を求め、今年3月には経営陣の刷新を発表し、出直しをはかったばかりなのだ。

ここまで経営が悪化した原因について市場では、JDIの中小型液晶を搭載する米アップルのiPhoneの販売動向やiPhone8が有機ELに乗り換えるかどうかもさることながら、経営陣にも責任の一端があるとの見方で概ね一致している。JDIに対する投資家の評判は決していいとは言えず、これまで「経営陣が自分たちの会社についてきちんと把握できていない」といった諦めにも似た批評はあちこちから聞こえてきたからだ。

加えて筆頭株主である革新機構が、JDIの経営にくちばしを挟みすぎる点も挙げられてきた。JDIはソニーと東芝、日立製作所の中小型液晶ディスプレイ事業を統合した寄り合い所帯。そこに革新機構出身者などが役員として加わり、オールジャパンの色彩が強まったが、結果から見れば"船頭多くして、船山に上る"。経歴だけは華々しいが、金融機関やコンサル会社出身者が多く、事業の目利きや企業の再建が本当にできるのかと疑われている。

7月26日に東京証券取引所が発表した「東証上場会社における独立社外取締役の選任状況及び委員会の設置状況」によると、独立社外取締役が全取締役に占める割合が3分の1を超えている企業は増えたとは言え、東証1部市場の27.2%でしかない。一方、JDIの取締役は7人で、うち5人が社外取締役。さらにそのうちの3人が独立社外取締役で占められており、JDIは形の上でこそガバナンスの優等生ということになるだろう。しかしそれでもJDIの経営に浮揚力が働かないのは、社外取締役制度が毒にも薬にもなり得る性質のものであることを示している。

革新機構に対する投資家の不信感を反映してか、JDIの今年の株主総会では議決権行使にちょっとした株主の抵抗の痕跡が見られた。野村アセットマネジメントが18日に開示した議決権行使の個別開示によると、JDIが提案した取締役選任案のうち、新任の2人の社外取締役にNOを突きつけたのだ。反対を受けたのは、勝又幹英・産業革新機構社長と東伸之・同機構投資事業グループ・マネージングディレクターの二人。結局、選任案は可決されたが、他の新任取締役の選任案には賛成票が投じられたのに、革新機構の二人だけは反対票が投じられたのだから「跳ねっ返りの運用会社が一社抵抗しただけ」では済ませられない。

産業革新機構と言えば、東芝の半導体事業売却でも大きな役割を担っているだけに、この体たらくでは懸念の声が聞こえてきそうだ。落伍した大企業のタンツボと化しつつある革新機構は、いずれ「骨壺」に成り果てるのではないかと。