阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2017年6月30日 [reuters]外国人投資家の「目と耳」リサーチマンを侮るな

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上場企業が株主と向き合わなければならない株主総会が、今年もピークを越えた。

死に体の東芝は言うまでもなく、子会社富士ゼロックスの粉飾が明らかになった富士フイルム、モノ言う株主に取り憑かれた黒田電気と川崎汽船など、今年も企業と株主の間で火の出るようなバトルが多かった。株主総会が特定の日に集中する傾向は一段と弱まり、企業が株主と向き合う傾向が鮮明になってきた。

取締役の選任や株主還元、経営効率の改善などで厳しい要求を突きつける存在と言えば、やはり外国人投資家なのだろうが、日経平均株価が2万円台を回復し値固めする展開の中で、外国人投資家は意外におとなしい。

東京証券取引所が毎月発表する投資部門別売買状況で外国人投資家の売買動向を探ると、月ごとに買い越したり、売り越したりで、方向感は乏しい。今年1月から5月までの累計でみると、やや買い越しとなっている程度。もちろん外国人投資家特有の季節的な要因が働いているせいでもあるのだろう。

しかし外国人投資家が水面下で何をしているのかを探ってみると、興味深い点が浮かび上がってくる。

外国人投資家は地理的環境や言葉の問題もあって、日本企業に対する投資判断には自社や投資銀行のアナリストの意見を参考にするほか、独自にリサーチ業者に情報収集を依頼することが少なくない。海外の機関投資家幹部と食事を共にすると、「○○research」などの社名が書かれた名刺を持った人物が陪席することがあるが、彼らは投資家の目や耳、手足となって働く子飼いのリサーチ業者の調査マンなのだ。

今年はこうしたリサーチ業者がてんてこ舞いの忙しさだという。株主総会が多く開かれるシーズンであることも影響してか、機関投資家から個々の日本企業についての調査依頼が次々に舞い込んでいるのだ。日本でコーポレート・ガバナンス・コードが整えられ、個々の企業でガバナンスがどのように強化されているのか、そうした企業で株主還元がどうなっていくのかを探るのが依頼内容だ。

また投資家向けの行動原則であるスチュワードシップ・コードに賛同する機関投資家が増え、企業側が投資家の掲げる要求とどう向き合おうとしているのかも彼らの関心事のひとつ。関心事と言うには当たり前の内容で、目新しさもないが、こうしたありきたりのポイントに外国人投資家の視線が集まるのは、日本企業の間でガバナンスが徐々に改善し、これが株主還元につながるとの期待があるためだ。

特にこの数年は、投資銀行のアナリストやストラテジストさえ気付かぬうちに株主還元を積極化している企業が増えているという。外国人投資家はそうした銘柄にまで目を配っているほどだから、市場での自己株式取得を発表しながら、実際にはほとんど取得していない"なんちゃって株主還元"の企業はバレバレだ。経営トップが投資家と向き合おうとしない企業や、規制に守られて経営効率が改善しない企業は市場で淘汰されていく。

と同時に、ゴマスリの推奨レポートしか書かない証券会社やナントカ総研の大甘アナリストたちも、彼らリサーチマンに出し抜かれ、粉飾のお目こぼしまで暴かれるケースも出てくるだろう。バランスシートの紙背に徹する眼光を持たない愚物は、アナリストを名乗る資格などないのだ。

3年目に入る森信親金融庁長官の「浄化」がやっと効いてきたというべきか。それが、掛け声倒れの感が強いアベノミクスの数少ない功績かもしれない。