阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」

2017年4月28日 [reuters]東芝「解体」――半導体部門売却の是非

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企業解体か、存続か、それとも法的整理か――。東芝の動きを、過去の企業再生や法的整理の事例に照らし合わせると、その行く末がぼんやりと浮かび上がるのではないか。

民事再生法や会社分割など、2000年前後に整備された法制度によって企業再生の手法は拡充した。それとともに「企業そのものを再生するのではなく、企業が抱える個々の事業を存続して再生させ、それによってできる限り雇用も維持する」――という考え方に変わっており、東芝と重なる部分が少なくないからだ。

2001年に会社更生法の適用を申請した新潟鐵工所の場合、スポンサー企業を見つけるのが困難で、プラントエンジニアリングや造船、変速機、原動機などの事業部門をさらに細かく切り分けてIHIや日立グループなど多くの企業に売却した。新潟鐵工所を再生するのではなく、事業の存続と再生を優先させたもので、同社は2007年に清算業務を完了して解散している。

私的整理と法的整理、会社分割を数年にわたって併用したのは旧ハザマ(現安藤ハザマ)だ。2003年に私的整理と同時に建築部門を切り出していわゆるグッドカンパニーとし、不良資産と化した土地・建物を多く抱えていた不動産部門をバッドカンパニーとして両社を分離した。資本関係をなくする会社分割である。グッドカンパニーに社員を移してこれを存続させる一方で、バッドカンパニーは不良資産や債務を引き継がせて社名を青山管財に変更し、2006年に民事再生法を申請。清算への切り替えを前提とした民事再生法申請だった。

東芝はどうか? 実際に法的整理や会社分割(4月24日に発表した東芝の会社分割は、資本関係が維持されるため、旧ハザマとは異なる)に踏み込んだかどうかを除けば、事業を切り売りし、ウエスチングハウスのようなバッドカンパニーの切り離しに乗り出したことは、新潟鐵工所の事業売却やハザマの会社分割に重なる。

すでに水面下では取引金融機関の間でメーン寄せが進んでいると聞くから、当面は法的整理ではなく、債権放棄による私的整理を意識しているように思える。

では、どの事業を中心に再生を進めるのか。

虎の子の半導体事業を売却するのは「愚の骨頂」との意見もあるが、すでに債務超過に陥った東芝にとって、半導体ビジネスのように好不調の波が激しく、大規模な設備投資とその更新が欠かせない事業を抱え続けることが現実的な判断かどうか。銀行の顔色をうかがいながら設備投資を決めるのでは、経営判断にスピードが求められる半導体ビジネスでの勝ち残りはおぼつかない。傷口をこれ以上大きく広げる恐れがある選択肢は選びにくいし、東芝を支える金融機関も同意しないだろう。成長性は乏しくても安定した事業を軸にグッドカンパニーをつくるしかあるまい。

三洋電機がそうだったように、すでに東芝は人材を含む経営資源を他社に供給する存在になった。好むと好まざるとに関わらず、事業譲渡先で「東芝○○」として社名にその名残を留めつつ、事業と雇用を次世代に引き継ぐことが東芝に残された仕事なのだろう。

ただ、原発子会社ウェスチングハウスの連邦破産法11条申請で東芝の連結から切り離し「リスクを遮断した」(綱川智社長)といっても、親会社の債務保証8000億円が残っている。ウェスチングハウス再建計画でこの債務保証を圧縮すれば、米連邦政府がジョージア州の原発2基につけた政府保証83億ドルを発動させざるをえなくなる。この軛がある限り、東芝がグッドカンパニーへ小さく生まれ変わるのはラクダが針の穴を通るように難しい。