阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2017年3月30日 [reuters]御意見無用、ガバナンス無用のWHが破産法申請

  • はてなブックマークに追加

東芝傘下の原子力関連大手、米ウエスチングハウス(WH)が29日、連邦破産法11条の適用を申請する――と各種メディアが相次いで報じている。これにより東芝は海外原発事業からの撤退に向けて一歩踏み出したことにはなるが、コーポレート・ガバナンス(企業統治)や内部統制を保てない企業が、その存在意義さえ厳しく問われることを改めて示した。

東芝の2015年に粉飾決算が発覚する数年も前からWHは企業統治の問題が囁かれていた。「かつてWHが三菱重工業と親密だった時も、WHは技術面での優位を理由に三菱重工の意見に耳を貸さなかった。東芝の傘下に入ってもそうした姿勢は変わっていないらしい」というものだった。WHはずっと不羈で、御意見無用の会社だったのだ。経営に節度を欠いていた東芝が、ガバナンスの利かないWHを傘下に収めたのだから放漫経営に歯止めがかかるどころか、負の相乗効果が表れたと見るべきだろう。ガバナンスを蔑ろにしたWHの経営が破綻し、野放図にリスクを取り続けた親会社の東芝まで解体されていくのは当然と言えば当然の成り行きだ。

「それにしても......」と思わずにいられないのは、企業統治の難しさだ。一日の長があるはずの米国企業にさえ、ガバナンスの利かない企業があるのだ。やはり企業統治は経営者個人の資質や思考法によって守るのではなく、強固なシステムとの両輪が揃わなければ維持することはできない。

もうひとつ問題を挙げるとすれば、原子力事業は民間企業が抱えるべきものであるかどうかだろう。東芝がWHを買収した際、共同出資を働き掛けた相手に住友商事の名前もあった。WHへの出資を決める住商の取締役会では、一部の役員から「原発事業は民間企業が負えるリスクではない」として反対意見が出た。反対した役員は「私が反対したことは取締役会議事録にはっきり残してほしい」とも求め、その強硬さに他の役員が鼻白むほどだったと聞く。

しかし住商は親密なビジネスパートナーである三菱重工業との関係に配慮しなければならないなど、様々な事情があって結局出資は見送られた。出資に賛意を表した当時の住商役員は今、東芝の惨状を見てどう思っているだろう。

原子力関連事業のように長期にわたってリスクにさらされる続ける事業は、目先の利益を極大化させることを重視する現代の経営と間尺が合わなくなっているのではないか。国際的な安全保障上の問題としても重要な原子力事業は、売りたくても売れず、退出が難しい。世界を見渡しても、原子力関連企業には不正や不具合の隠蔽が決して少なくないのも、退出の難しさと無縁ではないだろう。

仏アレバがそうであったように日本でも原子力関連企業は国営化の道を辿り、東芝は本誌でも指摘した「東京電力と一蓮托生となって、核の墓守」として生き延びるしかない。