阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2017年2月27日 [reuters]神戸製鋼、「中国関連」損失が第二幕

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学校法人森友学園への国有地売却問題で、名誉校長だった妻とともに国会で連日「ヤリ玉」にあがっている安倍晋三首相だが、1979年から会社員として3年間勤めて「私の原点」と語っていた勤務先、神戸製鋼所まで株式市場でキナ臭くなってきた。

2月2日に神戸鋼が業績見通しを下方修正したからだ。単に業績の好不調に対する関心というよりも、中国経済の減速と鋼材市況の急落で16年3月期に216億円の純損失に転落した悪夢の再現が始まるのではないかという警戒感が漂い始めたらしい。

神戸鋼の下方修正は、高炉の改修費用を計上したのに加え、中国での建設機械事業で2015年度以前に発生した焦げ付きを引き当て処理したことによるもの。通期の売上高は従来見通しを据え置いたが、営業利益は従来比400億円減の50億円とし、連結純損益はトントンを見込んでいたのを400億円の赤字に修正した。当然、無配転落である。

鋼材市況は中国の減産でやっと底入れしたというのに、一難去ってまた一難? 市場の憶測を呼んだのは、業績そのものというより中国での建機事業で計上した損失だ。

建機事業は神戸鋼のセグメントの中でも一定の存在感を見せてきた。ところがその中国事業は、営業と財務・経理を中国のパートナー企業が担当し、生産と技術は神戸鋼が受け持つ体制だった。中国側のパートナーは与信管理が甘く、回収不能になったり滞留したりする債権が膨張。近年は毎年のように損失計上を余儀なくされていた。

そこに打ち出されたのが、310億円もの引き当て処理だった。今回の神戸鋼の発表資料には「中国側パートナー企業と合弁解消」「貸倒引当金の追加計上」「滞留債権の回収が進まない状況」「支払い遅延の常態化」といった言葉が並び、事態が深刻であることをうかがわせる。中国事業の難しさを改めて浮き彫りにした格好だが、同時に異様さを感じ取った市場参加者は少なくなかったはずだ。「中国でハメられたのではないか」と信用調査会社も懸念を隠さない。

近年、中国市場で損失を計上した企業のなかには、かなりの痛手を負ったケースが目立った。2015年には中国現地法人の責任者が売上高を架空計上していたことが発覚し、民事再生法の適用を申請した江守ホールディングスや、ドイツ子会社が買収した中国企業の粉飾決算が明らかになり、社長のクビが飛んだLIXILの例がある。

神戸鋼も江守やLIXILと同様、2年ほど前から中国関連の損失が計上され、"何かある"と思われてきた銘柄の一つだ。昨年、10株を1株にする株式併合を行っているためわかりにくいが、併合前なら1株100円にも満たない低水準で取引される場面が多かったのはそのせいだろう。

神戸鋼が江守のような最悪の事態に追い込まれるとは思わないが、江守と神戸鋼には債権管理の甘さなど、似ている点があった。神戸鋼では今回の業績見通しを下方修正したことについて「過去の決算の修正を伴うものではない」と説明しているから、素直に受け止めれば中国のパートナー企業が売上高の水増し計上などを行っていたわけではなさそうだ。

しかしまもなく3月決算期末が到来する。江守がそうであったように、この先、監査法人の目が届きにくい中国関連の損失を計上する企業が再び増えるかどうか、気をもむ市場関係者は少なくない。

アベノミクスの失敗にもかかわらず、支持率6割強の「安倍一強」政権、最長政権も狙えると慢心し始めた矢先、静かにその強運に逆風が吹き始めたのかもしれない。