阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2017年2月 1日 [reuters]「難破船」東芝から取引先は逃げ出すか

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船が沈没しかけると、船内のネズミたちが我先に逃げ出すという。信用調査会社が東芝の取引先の動向を調査し、近く発表するそうだが、その離散度合いを測る目安になる。

東芝は原発部門ウエスチングハウスでの損失が5千億円を超すと言われるほど膨らみ、2年連続の巨額減損処理を迫られそうな形勢だ。このままでは3月期末に債務超過に陥ってしまうため資本調達が不可欠とみて、早くも切り売り先に関心が集まるが、これまでの優良な顧客や下請けが逃げずに東芝に付いてきてくれるかどうかも再建の成否を大きく左右する。

バブル崩壊後に経営破綻が続出したゼネコン業界では、下請け先がほとんど逃げなかった業者の再建が早かったという実例もあるから、取引先の動向は決して疎かにはできない。

帝国データバンクが実施した2015年7月の調査では、東芝とそのグループ企業の取引先企業は国内で2万2244社。内訳は「仕入先・下請先」が9649社、「販売先」が1万3746社だった。その後、ヘルスケア事業や白物家電事業などの売却によって取引先が減っているのは間違いないが、残した事業でどれだけ取引先を引き留められているかがポイントになるだろう。

かつてシャープの取引先を帝国データが調査したところ、離散度合いが顕著だった。価格や納期、支払い条件でいじめ抜かれた下請けがそっぽを向いたためで、その後のシャープがどうなったかは改めて記す必要はあるまい。東芝も粉飾決算が表面化する前には、取引先に対して一方的に支払い条件の変更を求めていたから、これに不満を感じていた取引先は少なくないはずだ。

しかも東芝が会社更生法の申請など法的整理を避けられないとの論調も目立ち始め、風評が悪化している。事業のさらなる切り売りが避けられず「緩やかな解体が始まった」との論調が、いつの間にか「法的整理やむなし」との論調に傾き始めている。原発事業での損失が7千億円に膨らむとの公算が支配的になったためだ。

しかし「債務超過に転落することはあっても、原発部門を抱えたまま政府に見捨てられて経営破綻するようなことはない」との見方が支配的なのか、株価は昨年来安値も更新せず、250円前後で推移している。東芝の先行きを心配して信用調査会社に与信状況を問い合わせる電話も、ほとんどかかってこないというから、取引先は案外落ち着いている。

とはいえ、「Xデーはいつか?」といった市場の憶測が飛び交いやすい状況が当分は続くだろう。3月決算期末を乗り切れば、今度は6月の株主総会後(会社更生法などの申請に動きやすい時期とされる)に差し掛かり......といった具合だ。

東芝グループの社員数は20万人近い。その後の事業売却によって社員数が減ったとはいえ、これが破綻すれば、その家族や取引先の社員も含めて100万人を超える人々が路頭に迷いかねない。ちょっとした政令指定都市の住民が丸ごと漂流してしまうような話だ。「働き方改革」などとノンキなことを言っている場合ではない。

しかも民生電機メーカーのシャープと違い、東芝は総合電機メーカー。国防産業の一角でもあり、公的部門への関与も大きい。出資には政策投資銀行や産業革新機構など政府系金融機関が取り沙汰されている。

福島原発事故以前、政府は原発輸出をバックアップし、原子力発電をエネルギーミックスの要と位置づけてきた。その割には、東芝の支援にその関与が今ひとつはっきりしないようにみえる。政府の関与がはっきりすれば、取引先の離散や動揺を防げるはずだが。