阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」

2016年12月 1日 タカタ法的整理へ、「明日は我が身」の企業

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エアバッグのリコール問題に揺れるタカタが再建に向けて、一つのヤマ場を迎えようとしている。再建の方向性を年内にも打ち出したいとしていたタカタに対し、外部専門家委員会がスポンサー候補を海外勢に絞り込んでいるとの報道が相次ぐようになった。

今後膨らむとみられる損害賠償金や制裁金、1兆円を超えるとも言われるリコール費用で自己資本が枯渇してしまうばかりでなく、エアバッグの顧客である自動車メーカーは相次いで「新型車にはタカタ製品を搭載しない」と表明しており、事業基盤の劣化を最小限に食い止める手当ては時間との戦いだ。

タカタは中間決算の発表時にも製品の安定供給を理由に、あくまでも私的整理にこだわりをみせた。これに対して、国内外のステークホルダーたちは法的整理による再建で臨もうとしているうえ、膨らみ続けるはずの偶発債務を前に"なんとしても健全な事業だけは生かす"という選択肢を選ぶのなら法的整理の方がいいとの指摘もあるから、タカタにとって厳しい結果になる公算が高い。

身から出たサビとはいえ、翻弄されているタカタを見ていると、改めて「こういう時代なんだな」と思わされる。海外事業で大きな失敗を犯し、それへの対応を誤ると手足を絡め取られるようにして経営の自由を奪われ、外国企業や投資ファンドの餌食になってしまう。資本の論理からみればタカタがそうなるのは仕方がないにせよ、日本の成長戦略や産業ポートフォリオの視点から見ればもったいない話だ。

日本企業が世界的に高い成長力やシェアを持っている分野であれば、なおさらだ。タカタへの出資を検討しているスポンサー候補の顔ぶれを見ていると、中には過去の出資案件で随分強引なことをやってきたファンドも含まれているし、米国籍でありながら資本上は中国企業傘下に入っている事業会社もある。まもなく決まるスポンサー企業がどこになるにせよ、力のある企業が最終的に誰に転売されるかわからない。

今さらこんなことを書いてみたのは、よく似た事例をいままさに追いかけているからだ。一企業の問題が、中長期的には国家戦略上の手痛い失点につながり、旨みのある部分がみすみす海外勢の手に落ちたり無力化したりしてしまうという深刻な問題である。「戦術があって、戦略がない」と言われる日本人や日本企業にとって、タカタの問題は対岸の火事ではないのだ。

まして年明けに発足するトランプ政権は、外国企業に対してビジネスフレンドリーとは言えない。過去に差別発言で顰蹙を買ったこともある人物が司法長官に指名された。爪はじきされるのはメキシコやキューバなど中南米だけではないかもしれない。白人至上主義者の目には、アジア人だって似たような存在に映っているかもしれない。新政権発足を前に、すでに喉元に匕首(あいくち)を突きつけられていながら、無為無策であるかに見える、ある日本企業についてFACTA次号でレポートすることを予告しておこう。