阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」

2016年10月26日 東京都「官製談合」疑惑追及3――醍醐本部長の危うい発言

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前回予告したように、都立広尾病院の改築移転問題が「政治案件」であることを示唆した醍醐勇司・元病院経営本部長(現水道局長)と佐々木病院長のやりとりを公開しよう。佐々木院長は、都側が移転が先にありきで何のビジョンもないことに危惧の念を伝えていた。醍醐氏はそれを説得しに来たのだが、要するに「考え直す余地はない。現場(どこ?)が待っているから移転しかない」という問答無用の姿勢である。相手がなかなか手ごわいと悟って、とうとう持ち出したのが政治家の名前だ。週刊朝日の取材には不適切だったと認めたようだが、あくまでも背景説明の個人的な話と逃げようとしている。だが、実際には「ここだけの話」と言いながら、村上都議だけではない政治的圧力がかかっていることをほのめかしている。これだけでも醍醐氏は、十分当局に聴取される資格がある。

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2015年1月21日 醍醐本部長 佐々木院長 広尾病院

醍醐 あのあと、秋山(俊行)副知事(現都人材支援事業団理事長)ときちっと話をしまして、先生のお気持ちは分かるのですが、我がほうの案件を副知事に了解をいただきましたので。NHKの話はいま進んでいるのですが、とにかく3月中に返事をNHKにもらう。そして、もしNHKの話がないということであれば、青山病院の跡地を使おうと。青山病院の跡地と、厚生労働省が持っている「こどもの城」というのがありますよね。あれが確か今年度末で廃止のはずで、あそこをつぶすと併せて2万7000(平方メートル)ぐらい。ですから、もし病院の移転がないとすれば、今度は青山ということで、どちらにしてもやはり移転、改築という(結論になります)。

なるべく早く、先生の思いは副知事に伝えましたので、「現場としては、とても待ちきれないので、ぜひ建て替えをしたいという強い思いがあるのですが」と言った上で、「技術的な問題や既に進行しているいろいろなこと考えると移転しかないでしょう」と。

実はこの話は自民党の村上(英子都議)さんには一応してまして、ヤマオカさんなどにはまだ下りていないのですが、ちょっとそれは内々にしていただきたいのですが、これはまだ推測ですが、自民党の村上(都議会)幹事長は渋谷区長選に出る雰囲気が。

佐々木 そうですね。桑原(敏武)区長はもう出ないと言っていましたので。

醍醐 急遽、2月12日だったでしょうか。渋谷で村上先生のパーティーがあります。たぶんそれが出陣式、決起集会なのだろうと思います。

佐々木 桑原区長はこのあいだの渋谷区の新年会でもう出ませんとはっきり言っていました。

醍醐 桑原さんの前(の区長)が小倉基さんで、その娘さんですから、ご本人もやはり(都議を)辞めたい意向があるのでしょうし、いま3月議会の調整をやっているのですが、村上さんは自民党幹事長として、この広尾病院の改築の必要性をぜひ質問したいと言っています。ただ、こちらも改築の必要性は十分認識しているというような答え方をするつもりですが、そのあと3月にたぶんいろいろな動きが出てくると思うのですが、そのへんのタイムラグの関係がありますから。

で、わが方としましても、いずれにしろそれまでの間、できる限りご要望に沿った改修をかけたいと思っております。これは今すぐという話ではないのですが、もうこれでやめますが、先生にご協力いただけるのをぜひお待ちしております。

佐々木 いや、嘘もなにもないのでそれは、僕が前に言ったことで日程が具体的になってから、そこで協力できるかどうか考えています。

醍醐 それで結構です。われわれ、ぜひお力を借りたいと思っております。もうこれでやめます。

<録音の音声ファイルはここをクリックしてください。クリックすると肉声が流れます>

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小倉基(昨年11月死去)は自民党都議を5期つとめ、都議会議長もつとめた都の重鎮で、92年参院選に東京選挙区から出馬して落選。その後は渋谷区長を2期務めたが、長男が覚醒剤所持で逮捕されて三選を断念し引退した。村上英子はその長女で、03年に補欠選で都議に初当選、14年には女性初の都議会幹事長になった。

父の後の渋谷区長になった桑原は、同性カップルに証明書を発行する条例を通して全国に知られた。15年1月の新年会で桑原が勇退を表明、その後釜を狙って自公推薦で村上が出馬することになった。父が元区長だったからという安易な人選で、さしたる実績もなかったから、自民党と都が目玉政策として、広尾病院の移転を彼女の業績にして売りだそうとしたのだろう。

区長選は三つ巴になった。野党も民共相乗りで矢部一を立てオール野党推薦候補となったが、桑原後継で人気の出た無所属の長谷川健(前区議)がダークホースで当選、村上は矢部にも及ばない3位に甘んじた。見事に当てが外れたのだが、村上が落選してもなお広尾移転を強行したということは、その裏に本当の「黒幕」がいて村上もダシに使われていたということだ。それにしても、渋谷を地元にして川田龍平参院議員とともに矢部氏の応援に駆け付けながら、足元のこうした利権の蠢きに鈍感な長妻昭・民進党代表代行はなにをしてるんでしょうかね。灯台下暗しとはこれを言う。「ぜひお力をお借りしたい」などとおためごかしを口にしながら、政治への目配りを強調して移転を既成事実化しようとする醍醐の小狡い台詞をじっくり堪能すべし。ここには本誌が名づけた「シン・談合」の正体が垣間見えるのだから。