阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」

2016年10月19日 電通の石井直社長はなぜ逃げ隠れするのか

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電通は自らPRを業としていながら、内部には報道管制を敷く矛盾した企業である。

女子社員の過労自殺問題では、三田労働基準監督署に過労死として認定され、東京労働局が電通本社や名古屋、大阪、京都の3支社、さらに電通西日本など子会社5社にも労働基準法に基づく立ち入り検査(臨検監督)を行う事態に発展したにもかかわらず、石井直社長は会見もせず、社長名のコメントも発表していない。

フィナンシャル・タイムズがスクープした「デジタル広告料の架空請求」問題では、9月23日に中本祥一副社長、山本敏弘常務らが会見したが、最高責任者の石井社長はやはり姿を見せなかった。今回は電通の全組織に及ぶ問題であり、立件の可能性もあるのに、社長が陰に隠れて広報が「調査に協力している」と言っただけなのだ。

塩崎恭久厚生労働相が閣議後の会見で「過去にも長時間労働に伴う自殺者を出した電通で再び自殺に追い込まれる事態が出た。極めて遺憾なケースだ」と述べ、菅義偉官房長官も「結果を踏まえ、過重労働防止に厳しく対応する」とコメントしている。政府でも問題視しているのに、どこ吹く風なのはどうしたことか。

ネットでは死んだ女子社員のツイートが回覧されて同情を誘い、電通は「ブラック企業」とレッテルを貼られて、ボロクソに批判されているのに、異常にツッケンドンと言うほかない。おそらく電通社員のリークだろうと思うが、ヴァイラル・メディアのBuzz Feedで、石井社長が社員に送ったメッセージが載っている。

それによると、
1) 労働管理の三六協定を刷新して、年次管理・月次管理に日次管理を加える
2) 現行では最長で月あたり法定外50時間(所定外70時間)だった上限を5時間引き下げて法定外45時間(所定外65時間とする)
3) 「自己啓発」「私的情報収集」による私事在館を禁止する
4) 最長50時間としている特別条項の上限を30時間とする
5) 16年4月に新卒入社した社員は、同11,12月に特別条項適用を認めない
6) 上記方針は即日実現へ取り組みを開始するとともに労組との協議を重ねる
という6項目で、これに人事局が「全館22時消灯」と通達している。

この通達はほとんど現実性がない。顧客の新聞やテレビなどマスコミが未明まで働いているのに、夜10時過ぎたら帰れ、なんて無理と現場は知っているはずだ。要は、場所を変えるなり、会社の預かり知らないところでやってくれ、と言っているようなもので、所詮、労働局対策としての社内文書だろう。これでは、一部で報じられたような残業時間の過少申告などが横行するだけだろう。この石井メールを見て、電通をよく知る小生の知人がこんな感想を漏らした。

高橋まつりさんの自殺が「社の業務上の事由にあることが行政に置いて認められた」としているが、ここまできてもまだ電通自身は非を認めていない。

「一連の報道に接し、心を痛めている社員の皆さんの心情を思うと、私自身、社の経営の一翼を担う責務を負っている身として、慚愧に堪えません」とあるが、慚愧に堪えないのは報道に対してであり、社長は「一翼」にすぎないらしい。これは電通社長らしい報道への脅しと責任逃れである。

「自己啓発」「私的情報収集」「私的電話・私的メールのやりとり・SNS」による私事在館を禁止とするのは、蛇足のようにみえて、実はこれを一番言いたかったのでしょう。社内事情を外部(マスコミ)にリークするなと。

「この難局を打開することは、私たち電通の新たな可能性を切り拓くことでもあります。共に、私たち自身の新たな未来を創り上げましょう」というくだりは、「共に」がキーワードですね。私は辞めませんという宣言ですね。

なるほど、いちいちもっともである。

臆病者で責任逃れの社長をいただく電通社員もお気の毒。ここは逆に、私的な電話・メール・SNSでむしろ内部告発せよ、と勧めたい。考えれば、高橋まつりさんはわが大学の後輩にあたる。どんどんブラック電通の実態を告発してください。創刊から10年、電通を告発しつづけたFACTAが受け皿になります。