阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」

2016年10月 3日 地方大学を蝕むパワハラと統治不全

  • はてなブックマークに追加

このところ象牙の塔で論文不正やパワハラといった不正やトラブルが絶えない。

数年前、西日本のある国立大学の工学部で、ある教授に対する感情的な反発がきっかけになり、人事労務担当の理事と部局長が共謀し、教授による学生に対する嫌がらせがでっち上げられた。

後に嫌がらせがでっち上げであることが判明。「大学の自治」という問題との兼ね合いで、文科省や捜査当局など外部の介入は招きたくない大学は本来、自主的に問題と責任の所在を明らかにしなければならないはずだが、学長らはそれをうやむやにしてしまった。

ところが最近になって、一部の大学関係者はこの事件を「パワハラとしてとらえてしまうと、問題が矮小化してしまう。むしろ大学のガバナンスの問題としてとらえるべき話」として、文部科学省に事態を通報した。つまり"内部告発事案"に発展しており、ちょっとした騒動に発展する可能性が高まってきた。

この大学にはこうした不祥事が複数存在し、教授・准教授や学生の間に深刻な亀裂と不信を拡大させてしまった。大学がこうした統治不全を起こすと運営費交付金の削減につながる失点としてカウントされかねず、大学側にとっては不祥事そのものを握りつぶそうとする誘因になっているのだ。

文部科学省が昨年、「運営交付金における3つの重点支援枠」として、期待される役割ごとに国立大学を3つに分類したことも影響しているのだろう。いわゆる「世界水準型大学」「特定分野型大学」「地域貢献型大学」への分類がそれだ。

国際標準型大学は東大を頂点とする旧帝大系に神戸大学や広島大学などを加えた16大学。特定分野型大学はお茶の水大学や東京外語大学、東京医科歯科大学などの15大学。地域貢献型大学はその他の55大学。早い話が、国から手厚い支援を受けられる大学を序列化し直したものだろう。

問題の地方大学は地域貢献型に分類されており、地盤沈下が進んでいた。都内の有力私立大学は、地方の大学教員の中でめぼしい人材を高額の報酬で一本釣りしており、地方の国立大学は教員の質を保つことさえ難しくなっているという。同時に学生の質を保つことも難しくなっており、電力会社やガス会社、地方銀行といった地元密着型の有力企業は「学生の質が、我々の求める水準に達していない」として地元大学の採用枠を取り払ってしまう動きが次第に顕著になってきた。

これはこの大学に限った問題ではなく、かつて大企業に財務・経理の専門知識を持った学生を多く供給してきた旧高等商業学校系の大学でさえ、そうした地盤沈下とは無縁ではない。

大学に対する運営交付金問題は、象牙の塔のガバナンス不全問題をあぶり出すと同時に、地方の衰退にも関わる問題なのだ。要するに、行政もまたガバナンス不全で病んでいるのだ。