阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2016年9月20日 オリンパスは反社の「共生者」か

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オリンパスはついに反社会的勢力の「共生者」に堕してしまったのか。

本誌は最新号の記事『オリンパス「囚われの」従業員寮』で、中国・深圳にある同社の製造子会社(OSZ)が現地の反社会的勢力に食い込まれ、従業員寮を不法占拠されている疑惑を報じた。

ところが、我々が徹底調査したうえで送った質問状に、オリンパス広報は口頭での「ゼロ回答」で応じた。「反社とのつながりがないならないと、はっきり回答したほうがよいのでは」と、ファクタが老婆心から念押ししたにもかかわらずだ。それが何を意味するか、広報はまったく理解していないらしい。

詳しくは後段の質問状と回答の全文をお読みいただきたいが、質問の要点はシンプルだ。OSZが深圳税関とのトラブル解決のためにコンサルタント契約を結んだ中国企業「安遠控股集団」は、反社組織の疑いが濃厚である。笹宏行社長らオリンパス経営陣が弁護士チームに依頼して行った社内調査の最終報告書(2015年10月29日付)には、安遠に対するOSZの反社チェックは「ずさんなものであったと考えざるを得ない」と明記されている。

そんな報告を受けた以上、経営陣は直ちに反社チェックのやり直しを命じなければならない。そして「反社ではない」との確信が得られなければ、安遠との関係を断ち切るのが当然のはずだ。

では、最終報告書の提出から現在まで1年弱の間に、オリンパスは ①安遠の反社チェックのやり直したのか? ②安遠との関係を断ち切ったのか? ―― 質問の核心はこの2点に尽きる。

その両方にゼロ回答を寄こしたということは、オリンパスは安遠の反社チェックをやり直しておらず、現在も関係が続いていると認めたに等しい。

思い起こすのは、13年9月に発覚したみずほ銀行(旧みずほコーポレート銀行と合併する前の旧法人)の「反社融資事件」だ。同行がオリエントコーポレーションとの提携ローンを通じて反社に融資していたことを、経営陣は10年に事実を把握していたのに放置していた。それが金融庁の検査で見つかって一部業務停止命令を食らい、みずほフィナンシャルグループの塚本隆史会長ら経営幹部のクビが飛んだことは記憶に新しい。

オリンパス経営陣も同罪だ。笹社長らは、遅くとも最終報告書が提出された15年10月末までに(実際はもっと早かったはずだ)、安遠に反社の疑いがあり、まともな反社チェックも受けていないという情報に接していた。にもかかわらず適切な対応を取らず、安遠との関係継続を黙認していたとしたら、それはオリンパスが反社に食い込まれた「被害者」から、反社の「共生者」となる道を選択したという意味にほかならないのだ。

さて、オリンパスの自浄作用にはもはや期待できない。そこで注目されるのが、メーンバンクである三井住友銀行の対応である。同行出身で15年6月までオリンパス会長を務めた木本泰行氏は、OSZが安遠とコンサル契約を結ぶ前に「贈賄リスクへの留意」を指示していたことが最終報告書で明らかにされている。三井住友は、OSZの税関トラブルや安遠の反社疑惑について木本氏から何も聞いていなかったのだろうか。仮に知りながら調べもせず、オリンパスへの融資を続けていたのなら、三井住友もまた「共生者」と見なされても仕方がない。

三井住友フィナンシャルグループの宮田孝一社長には、ぜひ質問状と回答の全文を読み、自社の「反社会的勢力に対する基本方針」に則って直ちに行動していただきたい。みずほにきついお灸をすえた金融庁も、海外案件だからと尻込みせず、三井住友のオリンパス向け融資を徹底検査すべきだ。

以下が質問状と回答の全文である。

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安遠控股集団との関係についての取材のお願い

平素は弊誌の取材活動にご協力いただき、ありがとうございます。
御社の中国法人Olympus (Shenzhen) Industrial Ltd.(OSZ)による中国の深圳税関当局への贈賄疑惑について、弊誌は御社が実施した内部調査の「最終報告書」を入手し、7月号(6月20日発売)で報道しました。その後さらに、最終報告書の内容の精査と情報収集を続けています。

最終報告書によれば、御社はOSZが抱えていたマイナス理論在庫問題を解決するため、安遠控股集団の傘下にある安平泰投資発展をコンサルタントとして起用。OSZが安平泰に支払った報酬2400万元の一部が税関当局への贈賄に使われた疑いについて、安平泰は内部調査への協力を拒否しました。

安平泰の"実体"である安遠に関しては、中国の反社会的勢力との関わりを示唆する現地情報が少なからず存在します。最終報告書の「主な事実関係」には、2014年1月に「OCAP内の一部の関係者間で、安遠の贈賄疑惑に関する記事を共有」、「阿部氏が平田氏に、『安遠グループ(公安一派)が反社チェック疑惑に引っかかった』と報告」、同年6月に「OCAP関係者から木下氏に、安平泰との契約解除が提案される」などと記されています。つまり御社の社内にも、安遠は反社ではないかと懸念する声が当時からあったということです。

同じく最終報告書の「内部統制上の問題点の有無」では、「OT幹部に安平泰を採用することの承認を求めた2013年(平成25年)11月中旬時点では、OSZは安平泰に対する適切な反贈賄デューディリジェンスを実施していなかった」、「2013年(平成25年)11月14日付『安遠控股集団有限公司について』と題する文書のなかには『社内反社会勢力チェック済み:問題なし(食堂業務委託契約時)』との記載があるが、(中略)どのようなデューディリジェンス行われたかは具体的には一切確認できなかった」、「2014年(平成26年)1月には、OCAPの法務部から、食堂業務委託契約締結時よりはるか前の2008年(平成20年)1月の時点において安遠の贈賄疑惑が報じられていることに対する懸念が示されていた」などと指摘。これらを根拠に、「食堂業務委託契約時に行ったとされる『社内反社会勢力チェック』はずさんなものであったと考えざるを得ない」と断じています。

以上の事実関係を前提に、下記7項目についてご回答いただきたく、お願い申し上げます。

1. 「反社チェックがずさんだった」との報告がなされた以上、御社は安遠に対する反社チェックをやり直す必要があるはずです。最終報告書が提出された2015年10月末以降、安遠への反社チェックを行いましたか。行った場合は、いつ、誰に依頼し、どのような結論が出たか教えてください。行っていない場合は、なぜ行わないのか理由をお聞かせください。

2. OSZは安遠傘下の安平泰と2011年10月に食堂業務の委託契約、12年2月に清掃業務の委託契約、同年4月に警備業務の委託契約、13年11月に廃水運搬処理の委託契約をそれぞれ締結しました。これらの契約は現在(16年8月時点)も継続し、安平泰が役務を提供しているのですか。

3. 最終報告書によれば、安遠は税関問題解決の見返りとして従業員寮2棟の譲渡を要求。OSZは「問題が解決した際には寮を売却する旨の補足契約」をOCAPの決済を経ずに締結しました。さらに、寮の売買契約を締結していないにもかかわらず、「従業員寮の使用収益権を安平泰に移転し、OSZが従業員寮居住者から取得していた家賃相当額を安平泰に支払って」いました。つまり、OSZはこの時点で従業員寮2棟を明け渡し、安遠に占有させたと理解して間違いありませんか。

4. OSZが安遠に使用収益権を移転し、家賃相当額を支払った従業員寮とは、具体的には最終報告書25ページに記載された「1棟及び10棟」ですか。

5. 最終報告書によれば、家賃相当額は2014年5月から15年2月にかけて支払われ、総額192万6000人民元とのことですが、それ以降は支払いを止めたのですか。それとも名目を変えて支払い続けているのですか。

6. 最終報告書の提出以降、寮譲渡に関する御社と安遠の交渉はどうなったのでしょうか。報告書にも記されているように、寮はHigh-tech Industry Park内にあり、深圳市政府によって第三者への譲渡や使用許諾が禁止されているはずです。御社は使用収益権移転の無効確認や占有された寮の返還を安遠に求めていますか。また、安遠はそれに応じましたか。

7. 本誌記者が実際に現地を訪れたところ、従業員寮の1棟と10棟は通りに面した1階部分が店舗に改装され、飲食店や雑貨店が多数入居していました。このような改装を行い、賃料収入を得ているのは安遠ですか、それとも御社ですか。前者の場合、御社はそれを黙認しているのですか。


以上です。弊誌の締切の都合もございますので、9月1日(木)までにご回答いただきたく、よろしくお願い申し上げます。

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オリンパス広報の口頭による回答

「当社は2011年の不祥事を境に業務上疑問に思った案件については自ら徹底的な調査を行ってきました。そうした中で、あらゆるステークホルダーのみなさまに向けては、開示すべき事項があればすみやかにお伝えしてきました。そうした企業姿勢は今日でも継続しており今後も何ら変わるものではありません。

そうした企業姿勢のもと、中国深圳の現地法人に関する件について、内部で提起された疑問点について、自ら徹底的な調査を実施いたしました。当該調査は2015年10月に完了しております。2015年2月に調査委員会をつくり、社内外調査を実施し始めた当初からお伝えしている通り、開示すべき事項があればすみやかに開示するとしてきました。調査の結果、法的に違反する事実、開示すべき事項はありませんでした。

当社は個別の契約案件についてはすべて公表しているわけではありません。今回の調査報告の内容についても当社としては開示しておりません。ご理解、ご了承ください。ついてはご質問いただいた7項目について、個別の回答やコメント等は差し控えさせていただきます」