阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」

2016年6月14日 [スクープ]LIXILの墜落19――上海美特は「第三のジョウユウ」か

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前回のブログではLIXILの欠陥便器リコールに関する質問状と回答を公開しましたが、我々は同じタイミング(5月30日付)でもう一通の質問状を送っていた。LIXILが3月に「1シンガポールドル」(約80円)で売却した元中国子会社、上海美特カーテンウォールについてです。

本誌は6月号の記事で、LIXILの南アフリカ子会社グローエDAWNウォーターテックが「第二のジョウユウ」ではないかとの疑惑を報じました。それと同じく、上海美特には「第三のジョウユウ」の可能性があります。

同社はビル用の外壁材メーカーで、LIXILが6年前、シンガポールの華人投資家から32億円で買収(出資比率は75%)した。これは「名ばかりプロ経営者」の藤森義明氏がトップに就任する前のことで、当時の潮田洋一郎会長(現取締役会議長)が契約に調印しています。

そして今年3月1日、LIXILはIR(投資家向け広報)を出して上海美特の売却を発表。この時点では売却額を明らかにせず、「当連結会計年度の当社グループに与える影響は軽微」としていた。

これは、またしてもLIXILお得意の姑息な隠蔽でした。5月9日に公表した決算短信の注記事項のなかに、上海美特の売却額がタダ同然だったことや、それに伴う特別損失が約60億円に上ったことがしれっと書かれているからです。

32億で買収して売却損が60億? この6年に進んだ円安を勘定に入れても計算が合いません。そもそも60億もの損失を「軽微」と吹聴するのは、一般株主に対する背信行為でしょう。

同じく決算短信の注記事項には、上海美特の16年3月期の業績が売上高約196億円、営業損失約60億円だったとあります。営業損失が売上高の3割というのは尋常ではない。しかも前述の3月1日付IRには、14年12月期の営業損失が3700万元(当時の為替レートで約7億2000万円)と書かれている。わずか1年余りで営業損失が8倍以上に膨れたのはなぜでしょうか?

これらの疑問にLIXILがどう答えたかは、下記の質問状と回答書(6月6日付)をじっくりお読みください。見苦しい言い訳の行間に、実態がにじみ出ています。

なかでも味わい深いのは営業損失の急膨張に関するくだり。理由は「顧客からの支払い遅延による貸倒引当金」を決算に繰り入れたからで、監査法人の無限定適正意見を根拠に「過去の損失先送りなどといった不正会計は全く当てはまらない」というが、ジョウユウも同じではありませんでしたか?

もともと回収できない不良債権があり、損失の表面化を防ぐため引当金の計上を先送りしていた。ところがジョウユウの不正会計発覚で監査法人のチェックが厳しくなり、引当処理をしないと適正意見を出さないと迫られた。おそらく真相はそんなところでしょう。

明日はいよいよ株主総会。怒れる一般株主の奮闘に期待します。

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FACTAの質問状

平素は弊誌の取材活動にご協力いただき、ありがとうございます。

御社は3月1日に中国の連結子会社、上海美特カーテンウォールの売却を発表し、5月9日付の決算短信で同社株式の譲渡の概要を公表しました。これに関して下記の5点にご回答いただきたく、お願い申し上げます。

1. 2016年3月期決算に計上された上海美特関連の損失は、営業損失が59億8400万円、株式売却に伴う特別損失が60億1800万円、合計で120億円(税引き前損失)という理解で間違いありませんか。

2. 売却発表時の3月1日付けIR(投資家向け広報)では、「当連結会計年度の当社グループに与える影響は軽微」としていました。60億円の株式売却損は、御社の認識では軽微なのでしょうか。

3. 上海美特の営業損失60億円は、御社の子会社のなかで最悪の業績です。ところが、4月11日付の業績予想修正のIRでは「中国ビル事業(上海美特社・3月末売却済)での税引後損失約△40億円等の一時的影響」と、特別損失だけにしか触れていません。5月9日の決算説明会でも、上海美特の営業損失について具体的な説明はありませんでした。なぜですか。

4. 決算短信によれば、上海美特の16年3月期の売上高は196億円(約10億2000万元)でした。その3割に相当する60億円(約3億1000万元)もの営業損失は、どう見ても不自然です。また、3月1日付のIRには14年12月期の売上高12億7000万元、営業損失3700万元と記載されています。わずか1年余りで損失が8倍以上に膨らんだのは、中国経済の減速だけでは到底説明できません。過去に利益の過大計上や損失先送りなどの不正会計が行われており、会社売却にあたってそれを整理した結果ではないのですか。

5. 2011年1月に上海美特を買収した際の取得金額は32億円でした。今回の売却損が60億円となった理由は為替差損ですか。それ以外の理由があれば教えてください。

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LIXILの回答

上海美特に関する各ご質問についてご回答申し上げます。

通期の営業損失59億8400万円については、第3四半期までに中国不動産市況の不振に伴い、貸倒引当金繰入を含め前年度より大きく悪化している旨とその悪化理由等を決算説明資料に開示しており、投資家の皆様への説明に努めております。

一方、売却につきましては、売却損失として特別損失に計上しておりますが税効果の利益もあり、親会社株主に帰属する純利益への影響は若干の損失に留まっており、通期の純利益に与えた影響は、ほぼ上記の営業損失額となっております。

よって、3月1日付の開示は上記に記載のとおり、売却に伴い税効果が発生致しますので、親会社株主に帰属する当期純利益に与える影響は若干の損失に留まっているため軽微といたしました。なお、売却損には債権放棄も含まれております。

また、4月11日付で発表しました「通期業績予想の修正に関するお知らせ」は、修正の主な理由にご記載した通り、主語は「親会社株主に帰属する当期純損益大きな差異が発生した要因は、」ですので、親会社株主に帰属する当期純利益予想に与えた影響理由を記載しております。これは、適時開示規則に則り開示しております。

よって、これ以前に開示した業績予想以降、この時点で認識していた中国ビル事業がその予想に与えるであろう影響予想額を記載しております。

今回の営業損失の主要因は、顧客からの支払い遅延による貸倒引当金繰入であり、中国の不動産市況の不振の波に見舞われたものとの認識であります。会計処理は各四半期、各年度毎に適宜適切に処理しており、監査法人より各四半期においてはレビュー報告書を頂き、各年度末においては無限定適正意見の監査報告書を頂いており、過去の損失先送りなどといった不正会計は全く当てはまらないことを申し添えます。

以上