阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2015年9月 2日 [reuters]外国公務員への贈賄と「明日は我が身」

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東芝社員による内部告発が止まらない。英フィナンシャルタイムズ買収では「日本企業の御用新聞」と言われた日本経済新聞は少しは発奮したのか、東芝社員向けに情報提供を求め、東芝の内側をえぐる記事を積極的に書いている。ご同慶の至りである。

しかし世の中はマスメディアの一歩、二歩先を行くものだ。東芝ばかりに関わっていられない。

弊誌にも日々、東芝以外の大企業の社員から内部告発が届いており、日本人なら誰でも知っているような企業や、旧財閥系企業から様々な不正についての情報が寄せられているからだ。東芝の炎上を見て、「明日は我が身か」と冷汗三斗の経営者もいることだろう。

しかし、このコラムでは敢えて先を急がず、懸案事項をひとつずつ片付けて行こう。内部告発の元祖と言えばやはりオリンパスだ。実は今年に入ってオリンパスで調査委員会が内々に立ち上げられ、近く報告書をまとめるのだそうだ。

報告書のテーマは、中国での医療機器を巡る営業活動。内視鏡の売り込みで現地の医療関係者に違法な利益供与を行ってきたとして、社内で調査委員会が立ち上げられたと6月に朝日新聞が報じた。その報告書が早ければ、9月中にもまとまる見通しだという。

報告書がまとまるというタイミングで申し訳ないが、弊誌の取材では中国だけでは済まない。東南アジアでも同様に外国公務員に対する贈賄が行われていることが判明している。

カネを渡した相手やカネの運び屋を務めた社員の実名に加え、誰の決裁でそうした資金の支出が行われたのか――など、詳細が浮かび上がっている。もちろん贈賄の構成要件である「ライバル企業の排除につながったか」についても資料が出てきた。

その関係者の名前を見れば、「やはりオリンパスはこの4年間、立ち直るチャンスをふいにしたのだ」と分かる。贈賄には、損失隠し事件に連座してお手打ちになってもおかしくなかった戦犯社員が関わっている可能性が濃厚だからだ。

オリンパスは損失隠し事件を受け、HP上に「新しいオリンパスの創生に向けて」というスローガンを掲げ、新たな取り組みを紹介しているが、それこそが最も大きな粉飾だったのだ。

経営や危機管理のコンサルタントに言わせると、今企業の大きな関心事のひとつに外国公務員への贈賄が挙げられるそうだ。国際的に外国公務員への不法な利益供与を厳しく摘発する傾向が急速に強まっており、巨額の制裁金が課されるケースがあちこちで見受けられるからだ。

米国には1977年に成立したFCPA(海外腐敗行為防止法)という外国公務員への贈賄を禁止した連邦法があり、その適用が近年厳しくなっている。上場企業、米国企業に限らず、いかなる者にも適用するとあるから、米国に進出している日本企業も対象になるのだ。オリンパスのように粉飾で悪名を轟かせた企業には監視の目も厳しくなり、中国などでの贈賄が明るみに出れば、米国でも槍玉にあがりかねない。

当然、コンサルタントが企業のコンプライアンス担当者を対象として開催する勉強会は盛況で、大企業からの集まりもいい。経済産業省も外国公務員への贈賄が企業にとって大きな問題になる恐れがあるとして、7月にはそのHP上で「外国公務員贈賄防止指針」を改訂し、啓発活動に余念がない。

日本企業がこうした問題に強い関心を持つのは、今なお贈賄に対する取り組みが遅れていることの裏返しであり、最近活発な内部告発でこれが暴かれたら企業にとっては目も当てられない大惨事になる。オリンパスに限った問題ではあるまい。