阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2014年12月28日 [reuters]第二の住商はどこか、「川上」ビジネス黄信号

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FACTA最新号(2015年1月号)は「住友商事『シェール大失敗』の戦犯」では、住商の米テキサス州でのシェールオイル投資失敗などを報じた。9月末に突如2400億円もの減損を発表、うち1700億円がシェール開発の失敗によると説明された。だが、数字の大きさの割には説明不十分だった。

FACTAは得意の調査報道によって、シェールのみならず、もう一つ、アフリカのニッケル開発でも「時限爆弾」を抱えていることを徹底分析した。資源開発が現状で抱え込んだリスクの大きさを、ここまで掘り下げた記事は少なくとも日本ではみあたらないと自負している。

しかも、こうした損失計上は住商にとどまらないとの見方がアナリストなどの間で高まってきた。株式市場では第二、第三の住商がどこかを探し、商社の間では自社の損失を正確に把握しようと社内に指示が飛んでいるという。

中長期的なターム取引では価格が予め取り決められているため、契約に沿って売買されることになるが、むしろ懸念されているのはスポット取引(当用買い)。価格の急落によって「スポット取引での損失は思いのほか大きくなっている」(商社関係者)という。

第3四半期決算の発表を控え、商社では年が明けて間もなくマスメディアやアナリストの取材を受け付けない沈黙期間が始まる。

商社ではそうした損失がどの程度あるのかを再点検しているが、価格の変動が激しいこともあって必ずしも十分に把握できていないようだ。「もしかすると把握できていない損失が隠れているかもしれない」と身構えるのは、ほかならぬ商社自身なのだ。

年明け後も原油価格の軟調基調は続くとの見方が広がっているだけに、商社が業績見通しを下方修正する動きは相次ぐかもしれない。商社株が電機や自動車株に比べて一様に戻りが鈍いのは、そのためでもあるだろう。

それだけならまだいい。原油価格の下落が玉突き事故を起こすように、欧州金融機関の信用不安を再燃させたらどうなるか。

「ブラジルやベネズエラなどの資源関連企業にはスペインやポルトガルの銀行からの融資額が大きく、これら産油国の企業経営が行き詰ると欧州金融機関の間で信用不安が再燃しかねない」というリスクシナリオを描き始めている。

加えて中国の動向も気になる。12月24日付の日本経済新聞はその社説で、中国からの鉄鋼輸出が過剰であると警鐘を鳴らしているが、商社はすでに今夏にはそうした懸念に身構えていた。

中国の粗鋼生産は、その質を問わなければ世界の半分を占めるほどに大きい。その中国で「危ない業種」と言えば鉄鋼商社がすぐに思い浮かぶほどで、今も夜逃げをする業者が後を絶たないという。流通在庫が負担になった中国の鉄鋼商社が在庫を海外市場で安値で売りさばくようになっており、こうした取引の焦げ付きが国際商品市場を通じて世界に拡散するようなことがあれば商社の事業環境がさらに悪くなるのは間違いない。

商社各社は事業ポートフォリオの入れ替えを進めており、伊藤忠は秋以降、ファミリーマートと滝沢ハムの株式公開買い付けを実施。丸紅も食品スーパーのマルエツ株を公開買い付けの実施を打ち出した。業績が比較的安定している“川下ビジネス”の強化を進めているのは、資源価格下落に伴う“川上ビジネス”のリスクを意識し、耐性を少しでも強化しておこうという思惑もあるはずだ。

「商社はこの数年、(業績好調で)調子に乗りすぎた。またいつか大きな失敗をやらかす」とは、商社OBの言である。資源価格の下落は、商社に90年代のような「冬の時代」が再来したことを告げる鐘の音かもしれない。