阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2014年9月 1日 [reuters]「不都合な幽霊」認めたアジア・アライアンス

  • はてなブックマークに追加

元はさえない倉庫会社だったが投資会社に転じて「ハコ企業」になったアジア・アライアンス・ホールディングス(AAH)が、いま揺れに揺れている。

FACTA8月号では、新株予約権を譲渡したことになっている海外ファンドが実は1年前に解散していたことを指摘したが、同社は8月1日付のニュースリリースで渋々これを認めたうえで、「現在、本件譲渡を遡って有効とするために必要な措置が進められておりますので、当該措置の結果が判明し次第、その結果をお知らせいたします。また、当社としては、現時点では本新株予約権が行使される見込みはないと認識しております」という摩訶不思議なコメントを載せている。存在しないファンドの名を使っても、 リリースの虚偽記載はなかった、とでも言いたいのだろうか。

AAH社企画管理部に対し8月28日、「リリースから1カ月近く経つのに、『本件譲渡を遡って有効とするために必要な措置』の発表がまだないが、その結果はどうなったのか」と問い合わせたが、「担当者はただいま席を外しております」と逃げの一手、としか見えない態度。1日経って催促しても、また居留守でFAXで「弁護士とも相談の上、来週以降にまた連絡させていただきたく存じます」と回答してきた。よほどFACTAを怖がっていらっしゃるのか。

どうやらAAHの顧問に雇われた政治家(故人)の息子が「FACTAの記事掲載を取り止めさせるために、着手金1000万円、成功報酬の250万円のほとんどをバラまいて黙らせた」などと吹聴していたらしい。その嘘がバレて、てんやわんやになったという。もちろん、そんな男に当方は会ったこともなく、何の接点もない。カネで転ぶようなヤワな雑誌だと思ってるなら、思い知らせてあげましょう。

これに先立って8月14日には、これとは別に2010年3月期以降の決算をすべて訂正した。これまでの会計監査人だったX監査法人がいい加減な監査(金融庁から行政処分を受けた)を行ってきた分、これを引き継いだY監査法人がドブさらいをやらされているようなものだが、「とにかくやたらと厳しい監査」(AAH関係者)だそうだ。過去の監査の不適切さをこれだけビシビシ指摘されては、X監査法人もいいツラの皮だろう。

訂正内容は為替換算調整勘定の修正などで大したものではないが、Y監査法人はAAHの投資先である中国の病院持ち株会社、Z医療産業集団有限公司など、これまで問題視されていなかった案件にまで口ばしを突っ込んできたというから、まだ何か隠れているのだろうか。

AAHに対する包囲網はかなり狭まっている。東京証券取引所に内部告発者が直接出向いて「相談」したことから、AAHに対して顛末書の提出を求めるなど、東証にしては珍しく事態の把握に乗り出している。

適時開示の内容に虚偽の内容が含まれている疑いが強まり、放置しておけなくなった関東財務局もAAHに対して事情の説明を求めた。8月14日に大量の決算訂正を発表したのはそのせいもあるかもしれない。

内部告発者は複数いて、うち一人は金融庁に加えて警視庁捜査二課にも駆け込んだと聞く。捜査二課は8月中旬、この人物に二度目の事情聴取を済ませたようだから、刑事事件に発展する公算が出てきたとみていいのではないか。

この告発者はかなり周到な人物のようで、金融庁には本名を伏せて弁護士の名で告発状を提出。新株予約権の無償譲渡でAAHの大株主になっている「のぞみ1号投資事業有限責任組合」の出資比率に虚偽の内容が含まれていることや、目的が定かでない顧問料を社外に大盤振る舞いしてAAHの業績悪化につながっていることなど、これまでFACTAが指摘してきたAAHの痛点を的確に突いている。

そればかりではない。新株予約権を譲り受けた別のペーパーカンパニーの代表は、2012年に関西を中心に数百億円の被害が広がったブックメーカー詐欺に関与した疑いが持たれている人物だ。騙した者と騙された者、騙したつもりが騙されていた者、騙した者の上前をハネる者たちがくんずほぐれつし、もはやどんなスキャンダルが飛び出してもおかしくはない。

これだけ深刻な問題が同時多発的に噴出しているこの難局に、肝心のAAH社長は3週間の夏休みを取って「行方をくらましてしまった」(同)そうだ。「(顧問の)民主党前衆院議員のところに善後策を相談しに行ったらしい」など様々な憶測を呼んでいるが、ことここに至っては誰かに相談すればどうにかなるという問題でもあるまい。

(この記事は8月29日にロイターに配信した記事に加筆したものです)