阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2013年12月31日 [leaks]KKRへの公開質問状と回答

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パナソニックが米国のファンド、KKRに子会社「パナソニック ヘルスケア」を1650億円で売却した件で、本誌最新号(2014年1月号)は「『津賀パナソニック』黒字転換に陥穽」という記事を掲載した。

ヘルスケア社が国内の電子カルテやレセコンのトップシェアなため、そのビッグデータ(診断書や処方箋などプライバシーにかかわるため「センシティブデータ」とも呼ぶ)が海外、とりわけ中国に流出する恐れがあると指摘したものだ。

これついてはパナソニックに質問状を送ると同時に、買う側のKKRにも質問状を送った。パナソニックは文書で回答したが、KKRジャパンは平野博文社長が12月10日に編集部に会い、インタビューに応じる形で回答した。

公平を期するため、同社への12月3日付の質問状と、回答にあたる12月10日のインタビューの要旨をここに掲載する。

KKRジャパン
代表取締役社長
平野 博文 様

パナソニック・ヘルスケアの株式譲渡について

ファクタ出版発行人 阿部重夫
同嘱託記者     山口義正

拝啓

 師走の候、貴社ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。弊誌は調査報道を中心とする月刊誌で、一昨年のオリンパス粉飾事件のスクープで、あるいはお見知りおきかと存じあげます。創刊の草創期には日興コーディアル証券やベル24の増資問題も取り上げさせていただきました。

 弊誌は現在、9月に発表されたパナソニック・ヘルスケア社の株式譲渡契約について取材を進めており、いくつかお尋ねしなければならないことができました。ヘルスケア社は三洋メディコムを合併した結果、レセコンと電子カルテ部門が事業の約3割を占める重要な柱となっています。ここは血圧計や血糖測定などの医療機器とは異なる医療情報(ビッグデータ)の塊で、これを外資に売却すれば、電子カルテによって蓄積された病歴などの個人データも売却され、この先どのような先に転売されるか見通すことは困難です。政府内および医療関係者から危惧する声があがっており、御社のお考えをうかがえれば幸いです。

1)1650億円の値付け

パナソニック・ヘルスケア社の株式譲渡にあたっては、二次入札で御社の価格が他の2社を大きく上回りました。その根拠はレセコン、電子カルテ部門(旧三洋メディコム)がもつ医療情報(ビッグデータ)を高く評価したと考えていいのでしょうか。

2)個人データ保護と転売

電子カルテによって蓄積された病歴などの個人データについて、現時点において国内では医師にしか守秘義務がありませんが、今後KKRが転売した場合、その守秘はどのように担保されているのでしょうか。パナとの合意にはその条項がありますか。

3)第三国への転売

KKRは内々に転売先を決めているとの情報があります。それが中国の可能性はありますか。国益上、日本政府が待ったをかけたらどうしますか。

4)米国内での転売と二次利用

電子カルテによって蓄積されたデータは、それをどのように二次利用するかによって、価値は大きく変わると思われますが、そこに歯止めはありますか。

5)ヘンリー・クラヴィス氏

KKR本体の共同創業者クラヴィス氏は来日して各方面に「ハゲタカ」ではないことを強調しておられましたが、9月の安倍訪米時はヘルスケア株式譲渡発表の前日(9月26日)に行われたハドソン研究所の昼食会で、総理の隣の席に座りましたね。そのとき、ヘルスケア買収の件を総理にそれを説明しましたか。

6)西武ホールディングス

平野氏は西武ホールディングスの社外取締役を務めておられます。対サーベラスでは後藤高志社長にさまざまなアドバイスを授けていると伺います。「外資に鉄道を買わせるな」という排外主義の片棒をかつぎながら、日本人数千万人の個人データを外国に売り飛ばすのは矛盾しているとお考えではないですか。

 以上でございます。御多忙中とは存じますが、締切の都合もございますので、12月9日(月)までに、文書、メール、FAX、直接取材いずれの手段でも結構ですので、ご回答下さいますよう、よろしくお願い申し上げます。

敬具

12月3日

これに対するKKR平野社長の回答は、一応こちらで録音したものの要旨をまとめ、KKR側に十分意見を反映しているかどうかみてもらったうえで、以下の通り掲載します。

1)1650億円の値付け

――PHCは診断薬事業、メディコム事業、バイオメディカ事業の主要三事業の全てにおいて大幅な成長を見込んでいますが、その中でもグローバルに成長余力のある血糖値測定システムを収益の柱と高く評価しております。純負債と現金残高を差し引いた価格は1,650億円より相当低いし、14年3月末のEBITDAは赤字の部門を外した金額を想定している結果現状より大幅改善すると判断しております。したがって、買収価格がEBITDAマルチプルの9倍以下というのは世界のヘルスケア業界平均からするときわめてリーズナブルな値付けとなるはずです。

2)個人データ保護と転売

――レセプトコンピュータや電子カルテの上の医療情報・患者情報に関しては、そもそもPHCは保有しておらず、医療データの転売は(PHCと顧客間の)契約の中でやらないと謳っています。他のシステム同様、保守メンテナンスの際に情報にアクセスすることは可能ですが、情報はきちっと保護する条項があります。(収集の禁止・秘密保持・許可なく第三者への提供・開示の禁止)。KKRではPHCに株式公開させることを考えており、報道されているような転売は全く検討しておりません。EXIT(投資資金の回収)に平均で7年半かけており、中には10年以上、株式を保有している投資先企業もあります。

3)第三国への転売

――内々にでも転売先を決めているということはありません、ましてやそれが中国の云々ということは当然ながらあり得ません。

4)米国内での転売と二次利用

――レセプトコンピュータや電子カルテ上の医療情報・患者情報に関しては、そもそもPHCは保有しておらず、医療データの転売は(PHCと顧客間の)契約の中でやらないと謳っています。そもそもメディコムはそれぞれの国でのローカルなビジネスです。

5)安倍総理とヘンリー・クラヴィス氏


――個別案件についての具体的な話はしなかったと聞いています。

6)西武ホールディングス

――私が西武ホールディングスの社外取締役を務めていたのは2006年までです。同社とサーベラスによるTOBをめぐる対立が報道された時期には、西武ホールディングス、サーベラスの関係者に会ったことはありましたが、私は後藤社長に対してアドバイスを提供する立場にはなかったですし、質問にあるようなコメントを言ったこともありません。

上記のように本誌の指摘、および懸念に対し全面否定である。本誌記事で書いた“台湾の受け皿”については別ソースから取材した。KKRの否定とすれ違いになっているのは、本誌がこの別ソースから得ているからである。

パナソニックは静観の姿勢だが、続報でそれを突き崩そう。お楽しみに。