阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2013年9月25日 [reuters]「内部告発」のマグマ

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ある証券会社の会長は心配そうな面持ちで「まだあるの!? まだあるの……?」と念を押すように二度繰り返した。損失隠しを続けている会社のことだ。

弊誌のもとにはオリンパス事件以降、今も様々な会社から内部告発が届くことは、これまでに当コラムで触れたとおりだ。そうした情報提供の中には、オリンパスよりも大きく、しかもアタマに“超”がつく優良企業についての情報も含まれている。当然、外国人投資家も少なくないから、記事になれば株式市場への影響は小さくはあるまい。

例えば、あるメーカーの関係者からは海外の関係先に有価証券投資に絡んだ損失を隠している、との情報が寄せられている。損失隠しに関連してのことか、金融機関との間で通常なら考えにくい金融取引契約を結び、有価証券報告書への記載義務が生じない形で巨額の担保を差し入れているから、そこには何らかの意図が働いているのだろう。これに伴って財務諸表には不自然で不可解な資金の出入りがあったことを疑わせる痕跡も数字として残っている。

こうした企業の通弊なのか、この会社もオリンパスと同じく風通しが悪いようで、2ちゃんねるには社員たちの不平不満がぶちまけられている。情報開示も積極的とはいえず、アナリストの間でも「こうした開示姿勢と企業統治上の問題は根っこがつながっているのでしょう」との指摘がある。

オリンパスがそうであったように、問題にいったん火が付けば、社内外の不満分子から堰を切ったように情報が寄せられるに違いない。議決権助言会社のように、日本企業の不祥事を虎視眈々と狙っている海外勢も、ここぞとばかりに牙をむくだろう。

メーカーばかりではない。

ある大手金融機関では隠し損失をロンドン現地法人にトバしておいて、孫会社のノンバンクに損失を移し替えたという。のちに子会社(このノンバンクの直接の親会社)同士の合併に際して、ノンバンクに対して1000億円ほどの資本注入をこっそり行い、急場をしのいだ。しかし関係者によると「1000億円の増資では到底足りなかった」というから、トバした損失額はそれよりもはるかに大規模だったのだろう。

相場に追い風が吹いていた局面でも、この金融機関だけは他に比べて有価証券のディーリング益が見劣りした。97年に自主廃業に追い込まれた山一証券がそうであったように、ディーリングで稼いだ利益を損失の穴埋めに使っていたのだろう。「1000億円では足りなかった」という証言とも符合する。

今回、少しだけ手の内を明かしたのは、こうした情報提供の中にはいずれきちんとした形で記事にできそうなものや、捜査関係者たちが「ここの財務諸表はいつもどこか変だよね」と言い合う会社も含まれるからだ。

さらに言えば、監査法人の責任が改めて問われかねない問題を含んでいる。本誌最新号ではオリンパス事件で問われたはずの監査法人や日本公認会計士協会の責任がうやむやになってしまったことも触れたが、そうはいくものか。

(この記事は本日ロイターに配信したものです)